終焉

 そのころ、地下6層


「隕石の突入は既に委員会でも気づいているだろう。戦闘もすでに始まっている。避難は遅々として進んでいない」

 老人は、静かな声に高揚感をにじませて言った。

「なんで、なんであんたはそんなことができるんだ!」

 平沢はすでに取り乱していた。

「人々の幸せのためだよ」

「あれだけの人間を皆殺しにして何が幸せだ!」

 平沢の怒声を老人は意外そうに見ていた。

「人々は何も知らなくていい。悩むのは一人で良い。そういうことですか?」

 再び日向が二人の会話に割って入った。

「何も知らなければ悩むこともない。ただ単調に目の前のことだけを楽しむ。それが幸せですか?」

「わかっているじゃないか、日向くん。そうだ、全てを知り悩むのは私だけでいい。そのためには大きな統治機構など不要だし、まして真実に迫ろうとする人々など決して存在してはならないのだ」

「あなたは間違っている」

 日向は静かに断言した。

「何故そう思うのかね?生贄が可哀想だというのでなければ聞こうではないか」

「人は生きている限り人でなければいけないからです、私たちは考えることをやめ、人であることを忘れてしまった。委員会の一部の人々だけが考え、悩み、人であり続けたんだと思います。あなたの計画が実行されてしまったら、人間はあなただけになってしまう」

「不幸であることが人間であることだと、君はそう言いたいのかね?」

「常に孤独という不幸をまとったあなたには、わからないでしょう」


6層の空洞に銃声がこだました。


「あんたの思い通りにはさせない」

 銃を構えたまま膝をつく平沢がそこにはいた。

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