スーパイ・サーキット

天河真嗣

主な登場キャラクターたち

<主人公と、それを取り巻く人々>

●キリサメ・アマカザリ

 本編の主人公。日系ペルー人の少年(両親ともに日本人)。

 両親とは死別しており、ペルーのスラム街で生き抜く為に喧嘩殺法を編み出した。

 日本で暮らすようになってから総合格闘技の世界に触れるが、暴力によって生き延びてきた彼にとって安全性を考慮したルールに基づいて行われる試合は理解に苦しむものである。

 人間の限界を超越し、死神へと変貌する異能『スーパイ・サーキット』を宿しており、

その恐るべき威力によって格闘技界を激震させる。

 のちにインターネットを中心として『四天王』と呼ばれることになるひとり。


●八雲岳(やくも・がく)

 日本総合格闘技の先駆けと呼ばれる世代のひとり。

 『天叢雲』では選手として出場するだけでなく統括本部長という役職も担っている。

 古くからの友人の忘れ形見であるキリサメをペルーから日本に引き取ることになる。

 若き日に忍術修行に励んだベテランのプロレスラーであり、『超次元プロレス』という独創的なファイトスタイルで人々を魅了し続ける。


●八雲未稲(やくも・みしね)

 本編のヒロイン。岳の娘。両親が小さな頃に離婚した為、通信制の高校で勉強しながら格闘家としての父を支えている。

 アニメやネットゲームにのめり込む一方、世間慣れしていない為に他人との距離感に鈍く、そのことで大騒動を引き起こす。


●麦泉文多(むぎいずみ・もんた)

 『天叢雲』を運営する企業『サムライ・アスレチックス』の社員。岳のマネージャーを務める。

 キリサメの試合ではセコンドを担当するものの、就学・就職を勧めるなど若い少年がMMA選手を続けることには否定的。


●表木嶺子(おもてぎ・みねこ)

 岳の別れた妻で、未稲にとっては実母である。『天叢雲』の興行を盛り上げるプロモーションビデオを手掛ける敏腕の映像作家。

 世界的なクリエイターとして注目されているのだが、生活よりも仕事を優先させるタイプであり、同じ傾向である岳とは夫婦生活が上手く行くはずもなかった。


●表木大陸(おもてぎ・ひろたか)

 未稲の弟(ただし、顔立ちは岳とは少しも似ていない)。離婚した嶺子の側に引き取られた。

 母親が『天叢雲』のスタッフでもある為、生まれたときから格闘技が身近にあり、これにちなんだ知識を自然と得ていった。

 喧嘩殺法と『スーパイ・サーキット』を操るキリサメのことを「最高の素材」と捉えており、卓越した潜在能力を引き出すべく『軍師』としてセコンド陣に加わる。



<日本の総合格闘技団体・天叢雲の関連人物>

●希更・バロッサ(きさら)

 『天叢雲』に所属する女性MMA選手。アイドル声優と格闘家の二足の草鞋を履いている。

 熊本の実家が道場を営むミャンマーの古い武術『ムエ・カッチューア』の使い手。

 国籍は日本ながら両親ともにアメリカ人で、本名は『キサラ』となる(希更は芸名としての表記)。

 代表作は『異界神座イシュタロア』という美少女アニメで、主人公の朝来乃つむぎを演じる。


●マルガ・チャンドラ・チャトゥルベディ

インド出身。『天叢雲』に所属する女性MMA選手で、希更とは親友同士。

 ヨガと格闘技をミックスさせた健康体操の教室でインストラクターを務めるなど友人と同じ兼業の格闘家でもある。

 国際ルールに準拠したスタイルの柔道とボクシングテクニック、ヨガによって得た驚異的な柔軟性を駆使した変則的な闘い方を得意としている。


●城渡マッチ(じょうわた)

 『天叢雲』に所属するMMA選手で、現役の暴走族総長(リーダー)でもある。

 日本MMAの最盛期である二〇〇〇年代からリングに上がる大ベテラン。

 比類なき腕っぷしと荒々しい喧嘩技を誇っていたが、四〇代を超えて以降は肉体の衰えが著しく、本人も限界を感じている。


●レオニダス・ドス・サントス・タファレル

 ブラジルのスラム街(ファヴェーラ)で生まれ育った『天叢雲』のトップスター選手。

 祖国の二大格闘技、カポエイラとブラジリアン柔術を極めており、狙った獲物を絶対に逃がさない格闘スタイルから『蜘蛛(スパイダー)』と名付けられる。

日本ではタレント活動も行っており、持って生まれたスター性もあって格闘技ファン以外からも広く支持されている。


●樋口郁郎(ひぐち・いくお)

 『天叢雲』の団体代表にして、運営企業『サムライ・アスレチックス』の社長。イベントの計画・実行だけでなくステージ演出まで引き受けるバイタリティーに満ちた人物。

 その一方で全盛期を過ぎているベテランが引退しないまま留まり続け、選手の高齢化が進む『天叢雲』を苦々しく思い、積極的な若手の登用による世代交代を推し進めるなど組織運営の為には冷徹な一面も。


●鬼貫道明(おにつら・みちあき)

 『昭和の伝説』とも呼ばれるプロレスラーで、現代のMMAに繋がる異種格闘技戦を

提唱し始めた最初の世代。いわば、日本MMAの祖先である。

 現役を引退して久しいものの、自分がオーナーを務める食堂『ダイニング士魂』へ

若き格闘家たちを招いて相談に乗ることも多い。

 格闘技界の生き字引のような存在でもあり、『天叢雲』では技術解説を担当する。



<アメリカの総合格闘技団体・NSBの関連人物>

●シロッコ・T・ンセンギマナ

 ルワンダ出身。アメリカを主戦場とするMMA団体『NSB』の所属選手で、日本を訪れていたときにキリサメと運命的な出会いを果たし、最大最強のライバルとなっていく。

 長らく続いた祖国の内戦によって左足を失っており、義足の格闘家として注目を集める。

 ジェームズ・ミトセという日系アメリカ人を祖とする現代総合格闘技術『アメリカン拳法』の使い手で、義足というハンデを物ともしない。

 日本のサブカルチャーを愛好しており、とりわけ『異界神座イシュタロア』は登場人物たちの台詞を真似るほど熱中している。

のちにインターネットを中心として『四天王』と呼ばれることになるひとり。


●シード・リング

 『ヌーベ・プエブロ』というネイティブ・アメリカンの部族の末裔。

 北米大陸のどこかに存在しているという『ヌーベ・プエブロ』の聖地を探し求めているときに武者修行中のンセンギマナと知り合い、意気投合。相棒として共に旅するようになった。

 カナリア諸島に起源を持つとされる伝統的な棒術の使い手でもあり、本気で闘おうものならンセンギマナをも圧倒するほど。

 ニックネームは『カリエンテ』。


●進士藤太(しんじ・とうた)

 岳の愛弟子。現在は日本を離れて『NSB』を主戦場にしている。そのストイックなファイトスタイルから『フルメタルサムライ』とも呼ばれる。

 過去の過ちが原因で訣別してしまったものの、今なお師匠のことを気に掛け続ける孝行者。


●ジュリアナ・オーケアノス・ヴィヴィアン

 『NSB』が誇る絶対王女。男女混合トーナメントを制覇し、名実ともに王者として君臨する。

 同団体で禁止薬物が横行していた時期、彼女もドーピングに手を染めてしまったが、最愛の夫に支えられて不死鳥の如く蘇った。

 MMA選手としてのキャリアも、人格の面に於いても円熟の域に達している。


●イズリアル・モニワ

 『NSB』代表。ハワイ出身(日系三世)。女だてらに荒くれ者揃いのMMA選手と対等に渡り合い、絶大な信頼を得ている。

 ヨーロッパ系格闘技団体と、そのバックにいるスポーツマフィアから買収工作を仕掛けられ、さらにはMMAの活動全般に反対するアメリカ本国の議員の圧力にもさらされて

存亡の危機に立たされる。


●孔普麗(こう・ふれい)

 『NSB』にて特別顧問を務める古老。大陸の伝説的な思想家・孔子の子孫を称している。

 仙人のような風貌ながらカクシャクとしており、前途有望な格闘家を支援するべく世界中を飛び回っている。

 歴史のうねりの中で滅んでいった伝統武術の救済にも力を注いでおり、

彼の尽力によって現代に復活した格闘技も少なくない。


●スカヴェンジャー

 かつての名前は『ヴァルチャーマスク』。二〇〇〇年代に日本のMMAが衰退する原因となった事件の責任を取る形で渡海し、現在はイズリアルの傍らでアドバイザーを務めている。

アクロバットなプロレス『ルチャ・リブレ』を駆使して常勝を誇る。過去に敗れた相手はジュリアナただひとり。

 孤児院へ金銭的な援助を行うなどボランティア活動にも熱心なのだが、その一方で裏社会との癒着を疑われるなど謎が多い。



<地下格闘技団体の関連人物>

●空閑電知(くが・でんち)

 『天叢雲』とは敵対関係にある地下格闘技団体、『イラプション・ゲーム』の選手。

 キリサメとは成り行きからストリートファイトで対決することになり、実力を認め合って以来、無二の親友となる。

 明治時代の伝説の柔道家、コンデ・コマ(前田光世)の系譜を継ぐ者と自負しており、文献などからコマの戦法を研究している。

 のちにインターネットを中心として『四天王』と呼ばれることになるひとり。


●哀川神通(あいかわ・じんつう)

 電知と同じ地下格闘技団体、『イラプション・ゲーム』に所属する女性選手。

 武器と体術を併用する古武術『聖王流(しょうおうりゅう)』の若き宗家(家元)であり、先祖伝来の奥義を絶やさず、磨き続けるべく危険な地下格闘技の世界へ身を投じる。

 戦国武将が愛用したような軍配団扇を手斧のように使う。

 古い武術の正統後継者である神通と、現代のスラム街で喧嘩殺法を編み出したキリサメは、殺人術の使い手という点では似た者同士でもあり、その魂は共鳴し合う。


●ヴィクター黒河内(くろこうち)

 地下格闘技団体、『イラプション・ゲーム』の団体代表。かつてはプロボクシングのフライ級世界王者だったが、対戦相手に片目を失明させられ、現在は眼帯を付けている。

 極めて悪質な反則行為であったにも関わらず、当時、メディアによって国民的スターに仕立てられていた対戦相手が罰せられることはなかった。

 そのことに絶望して現役を引退。メディアやテレビ局の影響を一切受けず、本当の意味で格闘技を愛する者たちが純粋に腕を競える場として地下格闘技団体を設立した。


<その他の登場人物たち>

●ストラール・ファン・デル・オムロープバーン

 オランダ出身。格闘技界では『聖家族』として名高い名門、オムロープバーン家の御曹司。

 華麗にして強力無比なオランダ式キックボクシングを極めた上、『スーパイ・サーキット』をも発動させて全世界を驚愕させる。

 広告利権などを食い散らかすことからマフィアと畏怖されるスポーツメーカーの経営者一族や、『NSB』に買収を仕掛けるヨーロッパ最大の格闘技団体『ランズエンド・サーガ』ともつながりが深い。

 のちにインターネットを中心として『四天王』と呼ばれることになるひとり。


●マフダレーナ・エッシャー

 中世ヨーロッパに伝わる魔術師の一族の末裔。あるいは異端審問から逃れた魔女の生き残りとも。

 ストラールにとっては最愛の婚約者であり、彼の生き様の全てを見届ける覚悟で付き添い続ける。


●小出切音流(おでぎり・ねる)

 熊本・八代市に所在する剣術道場の娘で、自身も肥後に伝承される幻の秘剣の使い手。

 同郷の希更や、彼女を通じて知り合ったマルガとは親友同士。

 ンセンギマナが体得したアメリカン拳法の祖、ジェームズ・ミトセと彼女の流派は因縁が深く、『当代』のミトセと呼ばれる人物の行方を追っている。


●火守鹿(かもしか)

 警視庁捜査一課・組織暴力予備軍対策係の刑事(警部補)。

 格闘技を暴力として憎悪しており、キリサメの『天叢雲』や電知たちが所属する地下格闘技団体をまとめて葬り去ろうと企む。

 頭脳戦を得意とする策士であり、キリサメの前に大いなる宿敵として立ちはだかり続ける。


●館山(たてやま)

 国内で執り行われる総合格闘技大会が適切なルールに基づいているかを監視する組織、MMA日本協会の役員。本職は女流弁護士で、都内に事務所を構えている。

 『天叢雲』の関係者からは煙たがられているが、安全性に考慮したルールは現代格闘技に於いて必要不可欠であり、いわば、日本MMAの守り神とも呼ぶべき存在。


●隅四井阿乱(アラン・スミシー)

 日本国内外の格闘技大会に欠員が生じた場合に助っ人として参戦している胡散臭い男。

 自らを『格闘技界の傭兵』などと称しているが、その経歴にはあまりにも謎が多く、最近は民間軍事企業を立ち上げたばかりだと語っている。

 イランの拳法こと『クン・ケフォ・タヴァン』を体得している。

 裏社会の情報にも通じており、キリサメにとっては敵にも味方にもなり得る要注意人物。


●姫若子正忠(ひめわこ・まさただ)

 大手殺陣道場『華斗改メ(かとうあらため)』に所属する殺陣師。ワークショップに参加したキリサメと知り合い、技術的なアドバイスなど交流を深めていく。

 いわゆる、脱サラを経て殺陣師の世界に入ったというが、会社を辞めた直接的な理由は別にあるらしく、彼にとって殺陣自体は生計を立てる為の手段であって目的ではない。

 偉大なる武術家、ブルース・リーが創始したジークンドーの達人でもある彼の正体とは……。


●瀬古谷寅之助(せこや・とらのすけ)

 電知の幼馴染み。電知がコンデ・コマ(前田光世)を研究しているように、寅之助もまた伝説の剣道家、タイガー・モリ(森寅雄)の系譜を継ぎたいと稽古に励んでいる。

 実戦向きの剣術の要素を残した古い時代の剣道を教える道場の跡取り息子。

 現代の剣道とは掛け離れた技しか持ち得ない為、公式の大会に出場することはできない。


●赤備人間カリガネイダー(あかぞなえにんげん)

 信州の社会人プロレス団体「まつしろピラミッドプロレス」のレスラー。

 岳はこの団体の技術指導を担当しており、キリサメも強化合宿に参加することがある。

 試合の度にプロレス団体総出で応援に駆け付けるなど八雲家の人々にとっては何よりも頼もしいサポーター。

 普段は市役所に勤める公務員。


●銭坪満吉(ぜにつぼ・まんきち)

 毒舌なスポーツ・スポライター。歯に衣着せぬ物言いが人気となり、ワイドショーなどへゲストコメンテーターとして出演することが多い。

 大した取材を行わずに自分の感情だけで他人を誹謗中傷する下劣な男だが、その毒舌によって印象や世論を操作され、引退に追い込まれたアスリートは多く、影響力は決して侮れない。


●爆煌丸(ばくおうまる)

 ヨーロッパを中心に道場破りを繰り返す正体不明の武術家。

 特定の団体に所属していないこと、異常に発達した筋肉の持ち主ということ、おそらくは日系フランス人と予想されること、そして、ヨーロピアン柔術と呼ばれる格闘技を使うこと以外は殆ど分かっていない。


●アップルシード・ミトセ

 アメリカン拳法の祖、ジェームズ・ミトセの系譜を継ぐ者。ンセンギマナの恩人であり、熊本に伝わる幻の秘剣の道場や哀川神通とも因縁が深い。

 『アップルシード』とはニックネームであって本名ではない。



※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・出来事とは一切関係ありません。

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