第7話 クエスト

 マット屋を出て、冒険者ギルドに向かう。

 昨日よりは時間が早いせいか、冒険者ギルドの中は、これからクエストに向かう準備の冒険者が屯ろしていた。

 俺とミュは、クエストの張り出された掲示板を見たが、正直初心者には分からない。

「ミュ、どれにしようか?」

「そうですね、この猪牛にしましょうか」

「ああ、任せるよ」

 それを聞いて、ミュはクエストを受付に持っていった。

「さて、二人での初クエストですね。がんばりましょう」

 ミュは嬉しそうに笑った。


 冒険者ギルドを出て、近くの店でランチを採ったあと、マット屋で預けてあったマットを持ち帰った。

 夜にはまだ早い時間だ。

 ミュが買ってきたマットを取り換え、ベッドルームから出てきて、リビングのテーブルの真向かいに座った。

「ご主人さま、何しましょうか?」

 って、期待してるよね。絶対しようと思ってるよね。

「うーん、何しようかな、ミュは何したい?」

「ええっー、そんな、恥ずかしくて言えません」

「なんだ、ミュは恥ずかしいことがしたいのか?」

「ち、違います、ご主人さまのしたいことがしたいのです」

 こいつ、ごまかしやがった。

「ほほう、俺のしたいことがしたいのか、何でも言う事を聞くと言うんだな」

「は、はい、ご主人さまのご指示のままに」

 もう、期待いっぱいで、顔を赤くしている。

「じゃ、スカートを捲って尻尾を出してみて」

「ええ、こうですか?」

 おお、尻尾が出てきた。

 先端がハート型になって長さが約1mほどだ。

「じゃ、こっちに来て、向うを向いて」

 ミュのお尻がこっちを向く。なるほど、やっぱり、尾てい骨のあたりから尻尾が出ている。

 その尻尾の先端を手で包み込み、指先で軽く摘んで捏ねてみた。

「ああ、いい、ご主人さまいいです、ああっ」

 尻尾の先端も性感帯があるみたいだ。

 どうもミュが立っていられなくなったみたいなので、身体を引き寄せ、膝の上に抱いてみると、尻尾が目の前にきた。

 その尻尾の先端を口に咥え、舌を使って念入りに舐めてみる。

「ああっ、だめです、ご主人さま、ああっ」

 手を前に回し、服の上から胸の突起物を軽く摘んでみる。

「ああー」

 と言って後ろに倒れ込んできた。

「もう、ご主人さまのいじわる」

「ミュは、いじわるなご主人さまは嫌か」

「嫌じゃありません、嫌じゃありませんから、ずーっとお側に居させてください」


 夜になって、クエストに行く。ミュは俺の後ろに回ると、後ろから抱き着いてきて、

「では、行きます」

 バサっと音がしたかと思うと、地上が見る見る遠くなっていく。

 おお、速い、時速何キロぐらい出ているんだろう。

 あっという間に街が遠ざかっていった。

 遥か向うにこんもりとした木々が目に入る。

 高度もかなり高いようだ。でも、風は以外と強くないし、寒くもない。風の音もほとんどしない。

 ふと疑問に思い、ミュに聞いてみた。

「ミュ、かなりの速度で飛んでいるようだけど、風も強くないし、寒くもないのはどうしてなんだ」

「あ、はい、魔法で結界を張っています」

 おお、結界さまさま。空を飛ぶのがこんな快適なんて。


 もう一つ聞いてみた。

「俺を抱えて飛ぶのは重くないか?」

 向うの世界では身長170cm、体重60kgはあった。女性にとっては重いだろう。

「いえ、私は20モーぐらいまで持てますし、魔法で強化すればその倍までは持てます」

 えっ?20モーって600kgぐらい。そんな、抱きしめられたら、俺ミンチじゃん。

「あのー、ミュさんや、あんまり力強く抱きしめられると俺としては困るんだが」

「はい、人族の耐性がないのはわかっていますので、ちゃんと加減をしてます。でも、ベットの上ではどこまで加減できるか自信がないです」

 うっ、今度から夜の行為は十分気を付けよう。

 それこそ腹上死になりかねん。いや、腹上ミンチだな。


 ミュは、森をだいぶ入った岩山の近くに降りていった。

 それほど高くない岩山だが、その横には洞窟があり、たき火が燃えている。

 どうやら誰かが住んでいるようだ。

「アロンカッチリアさん、居ますか?」

 洞窟に向かってミュが呼びかける。

「おお、お嬢か、ちょっと待ってな、今行くから」

 奥からドスの効いた声が響いた。

 しばらくすると、ドスドスという足音がして、一人のドワーフが姿を現した。

 そして、ふと俺に気が付くと、

「おい、人間じゃないか、お嬢」

「そう、私のご主人さまよ」

「なんだって、俺が人間嫌いだって知って連れてきたのか」

「ごめんなさい、アロンカッチリアさんが人間嫌いだって知っていたけど、どうしても私のご主人さまを紹介したくて、ご主人さまは悪い人じゃないわ」

「へっ、人間なんてどうだかわからねぇ、で、ミュは主従の契りを交わしたのか」

「ええ、もう契りを交わしたわ、私は一生、ご主人さまと一緒」

「そうかい、もう交わしたのか、おい、あんた、ミュを泣かすと俺がてめぇを殺してやる」

 ひえー、ドワーフ怖えー。

 しかし、ミュの主人たるもの逃げる訳にはいかない。

「アロンカッチリアさんですか、私は木林森彩、シンヤって呼んでください」

「ふん、人間の名前なんて覚える気はねぇ」

「ミュは一生大事にします。ミュになら生を取られても後悔はありません」

 どうやら、俺もすっかりミュにハマってしまったみたいだ。

 もう、昔の彼女の顔も霞んでしまっている。

 ミュは顔を紅潮させ目をキラキラさせている。

「ありがとうございます、ご主人さま」

「ふん、せいぜいよろしくやんな、で、お嬢、例の解体は済んでるぜ」

「はい、じゃ、いつもの通り、肉は半分置いておきますね。それ以外は貰って帰ります」

「ああ、分かった、で、これからまた、狩りに行くのかい」

「はい、今日は猪牛を狩る予定です」

「そうかい、そっちの兄ちゃんと組むのかい」

「ええ、パーティメンバーなので」

「へぇ、で、兄ちゃんは、どれくらい強いんだ」

「ご主人さまは今日が、始めての狩りなんですよ」

「なに、それで猪牛かい、まあ、ミュがいれば大丈夫だろうが、いきなり無茶するなぁ」

「狩れたら、また持ってきますから、解体お願いしますね」

「ああ、分かったよ、じゃ、気を付けてな」

 そう言うと、アロンカッチリアさんは洞窟の奥に消えていった。

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