決戦:開幕


 家を出て明層高校の下へ来た戒理、そこにファナがやってくる。

 遊園地からの帰りの時に、話をした二人は、ここで待ち合わせ、今からセカンドノアの本拠地へと向かおうとしていた。

「で、セカンドノアの拠点とやらはどこにあるんだ?」

「今、新たに建造中の浮遊区画の一つです。場所は明層市の端、あっちのほうです。少し遠いですね」

 ファナが指を指し説明する。

「歩いて下からいったほうが、見つかりにくいかな、まああんまり意味ないだろうが」

 浮遊区画は高次層式エレベータと同じシステムで横にも繋がっており区画から別の区画へ移動することが出来る。

「そうですね、行きましょうか」

「ああ」

 しかし、その時だった。戒理の携帯のアラームがなる。しかし戒理はそのアラームがただの着信でないことを知っていた。

「これは、降戦者への緊急出動要請!?」

「そんな……!?」

 急いで、要請の内容を確認する戒理とファナ。

『現在、明層市の変換所の直下で大量の外界落ちが発生、付近の住民を避難させ軍が出動するもその数に対応しきれなくなっている。近くの降戦者に至急応援求む』

「変換所直下!?セカンドノアがやってるのか!?なんで、このタイミングで……」

「センパイ! それより早くこの現場にいったほうがいいです! 変換所が破壊されたら他の浮遊区画が落下します!」

「ッ! 降戦者になれファナ! 一気に飛ぶぞ!」

 そこで戒理とファナは、一つの機械を取りだした。

 小型の次元交信機、高次層からエネルギーをこちら側へ持ってくるための装置だ。

 こちら側で降戦者に変わる場合は、これによる補助が必要な場合がある。

 遊園地での戦いで消耗した二人は使わざるを得なかった。

 竜徒と獣徒、二つの影は高速で夜の街を駆け抜ける。

 屋根の上を飛び最短距離を付き進む。

「見えた!あれが交戦区域だ……ってなんだあれは!?」

 そこでは大量の外界落ちとそれを排除しようとしている汎用型降戦者リミテッドディセンターが一進一退の攻防戦を繰り広げていた。汎用型降戦者『人徒ヒューマソル』などとも呼ばれるそれはは様々な降戦者のデータを取りその平均値を機械で再現した兵装であり、なにかに特化した形態や固有の能力は無いが、外界落ちとも十分戦う事が可能である。

 しかし戒理が注目したのはそこではない。

 その戦闘の中心に巨大な樹木があったのだ。しかもその樹は目に見える速度で成長し上へとその幹を枝を伸ばし続けている。

「センパイ、あの樹は降戦者です! 多分あれが外界落ちをここに送り込んでるんです」

「つまり、あの樹は高次層とこっちをまたいでるってことか? 無茶苦茶やりやがる。とにかくファナは外界落ちを頼む!俺はあの樹をなんとかする!」

「わかりました! センパイ気を付けて」

「お前もな」

 言い合った二人はまず樹の下へと飛びそこで二手に分かれ交戦に入ろうとしたその時。

「おっと樹徒プランソルを攻撃させる訳にはいかないぜ竜徒」

「ワタクシのかわいい配下ちゃん達をこれ以上、減らす訳にはいかなくってよ薄汚い子猫ちゃん?」

 二人の前にそれぞれ、新たな降戦者が立ちはだかった。

 戒理の前に現れたのは、人型の猛禽といった風貌の降戦者。

「お前は鳥徒バーソル……クライヴなのか? お前までセカンドノアに……」

「覚えててくれたなんて光栄だなカイリ、お前とは何回か共闘しただけだったのに」

 クライヴ・ホーク、かつて、軍に所属しており、その時、共に下界落ちと戦い、そして語り合った友。

 戒理は、驚きつつも、覚悟を決め戦闘態勢を取る。

 そしてファナの前には人型の女王蜂といった風貌の降戦者

蟲徒インセクソル、あなたはこんな前線に出てくるタイプじゃなかったはずですが?」

「実はあなたのおかげですのよ獣徒、あなたが吊男級で行った外界落ちの遠隔操作、あれのおかげでワタクシにも戦う手段が出来たましたの」

 セカンドノアのメンバーはかならずしも全員が全員と面識があるわけではない

 ファナは蟲徒と共に活動した事こそ、あったがその素顔さえ知らない、ファナにとってはその程度の間柄だった。

 だが、蟲徒の方は、ファナがノアと『直に会って話した』という事実と、自分がまだ直接ノアと会話していないということがコンプレックスらしく、なにかとつっかかってくるのだった。

 そんな因縁を抱えたそれぞれの戦いが、今始まろうとしていた。

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