第2話 複製

 邪神の侵略の魔の手はすぐそばまで迫っている。

 人目に付かぬ木々に囲まれた、近所の公園の植木の中にクトゥルーの基地はあった!


「痛かったのです。もうちょっとで、消化されてしまう所だったのです」


 野犬を撃退したクトゥルーは、傷を癒しながら考えていた。


「凶悪な獣なのです。この星で一番強い獣なのです。侵略している間に基地が攻撃されるかもしれないのです」


 クトゥルーは、眠らずに考えていた。

 決して、寝てる間に野犬に襲われて食われるかもしれないという恐怖に、一睡も出来なかったわけではない。


「仲間を増やせばいいのです」


 クトゥルーは、何と恐ろしい事を思いついたのか!

 一匹でも人類を根絶やしにするに足る邪神を、さらに増やそうというのか!

 まさに悪魔の計略、そう、クトゥルーは、分裂して、自分の分身を作ることが出来るのだ。


「1号なのです」


「2号なのです」


「3号なのです」


 何と!

 一度に三体もの邪神が増えてしまった!

 この恐怖に、打ち勝てる人間などいない。

 人類は、恐怖に震えながら、滅亡するしかないのだ!


「侵略に行って来る間、留守番をするのです」


「留守番なのです」


「見張るのです」


「ごろごろするのです」


 ついに、侵略を開始した、邪神クトゥルー!

 しかし、何を思ったか踏みとどまった。


「やっぱり、みんなで、侵略に行くのです」


 さみしかったのか!


「わーい、侵略に行くのですー!」


「ゴミを始末しに行くのですー!」


「ごろごろするのですー!」


 人類滅亡へのカウントダウンが始まった……。

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