そりゃちょっとムリあるわあ

1億円強盗

 ふうたんとてっちゃん、1年に1度の市のイベント。まるごとバザールに行くことにした。2人で、高校生みたいに、自転車を並走しながら漕いで、現地に到着。

 さて、今年は何がやっているのかな?


 ズラーっと並んでいる屋台は、


「…餃子。」

「餃子!」

 ふうたんと、てっちゃんのテンションに大きな差が産まれた。

 てっちゃんは餃子が大好き。ふうたんは、嫌いじゃあないけれど、大好きって訳では無い。好きは好きだけど、てっちゃんみたいに興奮するほどは好きでは無い。


『餃子』『餃子』『餃子』

 立ち並ぶ餃子オンパレードの屋台ブース。

 本年のまるごとバザールは餃子がメインなようだ。ふうたんは餃子以外のいいものが出ていそうなブースを探してくると、てっちゃんに別れを告げ、自転車を漕いでその場を後にして、2人は別行動をとることにした。


 てっちゃんは、数並ぶ餃子のブースの中から、食べた事のない餃子で美味しそうな餃子を探してて探索。


 一方、ふうたんは、自分好みのブースが全然なくって、

 つかれて、すわって、休憩してたら、

 子供になんか、重いものもたせてる税金の習字貼ってあるブースのおじさんいたので、

 ぼーっと見てた。


「これが1億円の重さだぞ。」


 おじさんは確かにそう言っていたので、

 ふうたんも持たせてもらう事にした。


「私も持っていいですか?あ…あぁ…。」

 ふうたんが持とうとした1億円の前に、

 キイイイ

 っと、自転車に乗ったファンキーなじいさんが現れて、サッと1億円を自転車にまたがったまま持ちやがった。じいさんニヤっとしている。

 ―「強盗か?このじいさん1億円強盗するつもりか?」

 ふうたん、横入りされたことはスッとんで、じいさんがどうするのか、ワクワクしながら見ていた。

 じいさんは、

「おー、サンキュー!」

 と言って、自転車をキコキコ漕いで何処かへ消えて行った。


 ―「なあんだ。つまんないの。」

 ふうたん、平和な世の中を『つまんないの』なんて思ったらダメだぞ。


 気を取り直して、

 ふうたん、1億円を持たせてもらうことにした。

「ひょえ~。へえ!こんなに1億円って重いんですか。これじゃあ、私には1億円強盗できないです。」

 ふうたん、ニッコニコしながら偽物の1億円を抱いて持って立っていた。


 遠くから、声が聞こえてくる。

「ふうたああん!ふうたん!」

「ん?」

 てっちゃんが、険しい表情をして自転車を猛スピードでキコキコ漕いでふうたんの方に向かってやってくる。

「どうしたの?てっちゃん。」


「ふうたん!ふうたん何を持ってござるの?ダメだよ。どうしたのそのお金。」


「強盗するの。このおじさんが持っていいって言ったから、このお金家に持って帰る。強盗する。」

 ふうたん、冗談でそう言ったら、てっちゃん本気にして、

「そんな大金強盗しちゃダメ!」

 とオロオロ慌てふためいた。


 そんなこんな有りながら、まるごとバザールでは、てっちゃんの餃子しか目ぼしい収穫は出来なかったけれど、楽しく参加出来て帰宅してきた。



 ふうたん、疲れてお昼寝中。

「1億円と私、どっちが重い?」

 また始まった。寝言だ。てっちゃん、ソーっと静かに身を潜め、ふうたんを構わない様に放置した。

「1億円とお!ふうたんはあ!どっちが重いですかあ!?」

 ふうたんが怒りだした。

 こりゃあかん。小さい声で答えよう。

 てっちゃん、小声で、

「ふうたん。」

 と言った。ふうたん、むくッと起き上がり、

「1億円は10キロもあるんだよ!私の方が1億円より重いってどういうこと?!」

 怒った。ふうたん怒った。

 はっけよーいおこったおこったあ~あ~おこったおこった~


 てっちゃん困った。

 はっけよーいこまったこまったあ、あ~こまったこまった~


 今日も、寝ぼけるふうたんであった。

 「ふうたん、体重10キロないもん~うわあ~んわんわん。」

 寝起きが悪すぎて泣き出す始末。こりゃ、てっちゃん大変だあ。



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