ふうたん、肺炎になる…

ふうたん元気に入院!

 ふうたんが、肺炎になった。


 血液検査の炎症値、正常値0.3のCRPが、19になっていた。

 即入院。


 ふうたんは。翌日お義母さんとてっちゃんと三重の伊勢湾に旅行に行く予定だった。

 落ち込むふうたんに、シュークリームを10個買ってきて慰めるてっちゃん。


「食欲ないよ、そんなにシュークリーム食べられないよ。」

 と言いながら、シュークリームを、「んまんま」とむさぼり食べるふうたん。


 てっちゃんは、鼻に酸素チューブをされたふうたんが美味しそうにシュークリームを食べる姿に少し安心した。

 でも、肺炎は肺炎だ。

 10個くらい、いつもだったらペロリと平らげるふうたんが、シュークリームを食べる手をパタッと止め、ベッドに横になった。



 てっちゃんは、何故か、ふうたんを運んできた車いすに乗って、

 4人部屋を1人で使わせてもらってる広い入院室の中を、

「びゅーん、びゅーん!くるくるくる~!」

 と、手で漕いで回った。


 いつもなら、ケラケラ笑うふうたんが、笑わない。


 てっちゃんは、心配しながらも、面会時間が終わる夜8時になると、家に帰って行った。



 その夜、

 夜中に、背中がかゆくなって起きたふうたん。

「てっちゃん、背中かゆい!掻いて掻いて、早く!」

 無情にも、そこは病院の入院病棟の中の1室だ。てっちゃんはいない。


 ふうたんは、その事に気付き、

 酸素チューブをはずして、点滴の袋がぶら下がっている棒をカラカラと引っ張って、ベッドの柵に背中をあてた。


 寛平ちゃんの、

 「かいーのかいーの」

 と、同じ要領で、背中をベッドの柵にこすりつけて掻いているふうたん。



 横から、小さい声が聞こえてきた。


「…ふうたん、何してるの?」

 巡回中の看護師さんからの質問だった。


「背中が、かゆかったから掻いてるの。」

 看護師さんは、少しホッとした様子で、

「ナースコール押したら、掻きに来てあげたのに…」

 と、ふうたんの背中を掻いてくれた。


「もうちょっと右、もうちょっと上。そこそこボリボリボリー!もっと強くボリボリボリーっ!」


 看護師さんは。クスクス笑いながら、ふうたんの背中を掻いてくれた。



 背中がかゆくなくなって、再度眠りに就いたふうたん。

 家にいるより暖房が良く効いている入院室で暑くなり、ズボンを脱いで上着も脱ごうとした。

 点滴が刺さっていて、上の服が腕を通り抜けれない。

 諦めて、中途半端にチラリズムの下着姿になって布団を引っぺがし、

「お~涼しい。」

 と眠りに就いた。


「…ふうたん、何で裸なの?」

 またもや、小さい声が聞こえてきた。


「裸やない、パンツ履いてる。ベージュ色だから裸に見えてるだけでちゃんとパンツ履いてる。」

「そういう事じゃなくて、なんで裸なの?」


「暑くなったから脱いだの!ふうたん眠い!」


 看護師さんは、ふうたんのあらわになった下半身にそっと掛布団をかけ、次の部屋に巡回しに行った。



 -何年か後日

「あら、ふうたん。元気そうね。」

 1人の看護師さんに、階段からこけて落ちて全身あざだらけになって病院に訪れたふうたんが声をかけられた。

 病院で、

「元気そうね。」

 と言われるのも何だけど、よくふうたんの名前を憶えてるなぁ?と、見覚えのない看護師さんに、

「はい。元気です。」

 と答えた。


「入院してる人で、背中をベッドの柵で掻いたり、裸になったりする子いないから、よく覚えてるよ。背中、痒くない?掻いてあげようか?」


 付き添いで一緒にいた、てっちゃんがそれを聞き、

「ふうたん、家と病院は違う場所だよ、看護師さん驚かせたらダメでしょ。」

 と、ふうたんはてっちゃんから、小言を言われた。


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