喫茶店(その3)


―少し前の話、少しと言っても一ヶ月は前だけれど休み時間の時、友達に「好きな人が出来た」と相談を持ち掛けられた。相談と言うよりは話を聞いて欲しかったらしい。

友達の好きな人と言うのは別のクラスの男の子らしく私も少し気になり、写真を見せてもらった。すごくイケメンで女の子からモテてそうと言った感じだった。友達はひたすら好きな人の良いところや好きになった理由を教えてくれた。告白はまだらしく、付き合うにはどうしたらいい?と聞かれ私は答えられなかった。

正直、私はこういった恋愛話は苦手で経験も無く友達の役にたてそうに無かった。何で私に相談?と聞くと友達は何となく話やすいからと言われた。

その日から、何か進展があったら友達が相談に来て、「どう答えたら嫌われない?!」とメールの返信を聞かれたり、「遊びに行くんだけど服何着れば良いと思う?」と聞かれ私は「返したい言葉で、着たい服で良いと思うけど....」とあやふやに答えていた。


その相談から数日たった日の休み時間、また別の子から相談があると言われた。内容はまったくあの子同じだった。「好きな人がいる」と言われ、写真を見ると友達と同じイケメンくんだった。私は咄嗟にダメって言おうとしたが、まだあの二人が付き合ってる訳じゃ無いし、私の判断でこの子の恋を邪魔しちゃいけないと思ったから....

その子も何か進展があったら私に相談してきた。何で私?と聞くとその子も話しやすいからと言われて私が苦笑いしたのを覚えてる。


二人の子から相談を受け、同じ人を好きになった二人。私はどっちの恋も応援したくて、どっちかの相談だけ聞くとか出来ず、今でも二人の相談に乗っている。二人とも良いことがあったら笑顔で、何かメールとかで嫌なこと、不安なことがあると悲しい顔で私に相談してくれた。二人とも恋して青春をしていて、私は羨ましいと思っていた。

けどそれと同時に何かが私の心に積もっていった。二人ともがイケメンくんと付き合うわけがなく、どっちかはフラれる。もしかしたら両方フラれるかもしれない。両方フラれた時、私は友達に何が言えるだろう。いや、何かを言える言葉が無いと思った。片方が付き合ったとしたら片方はフラれることになる。付き合った後の話を言う子とフラれた話を言う子が居て、私はどういう顔をして聞けばいいのか分からなくなった。幸いまだ二人は告白していなく、フラれてもいない。


でも、そんなことを考えると胃がキリキリして、気持ち悪くなって、心が重く感じる日々が増えていった。どちらかの幸せを願うことが出来なかったからだ―



私は思っていたこと、悩みと言えるモノではないことを青年に話した。分かってる。私は二人の恋に関係ないし、どちらの相談も真剣に聞いて、真剣に答えるだけでいいと分かってるいけど、どちらかの、あるいは両方の悲しい顔を想像すると嫌な気持ちになる。


今まで、ずっと誰にも言わなかったことを私は見ず知らずの青年に話した。

青年は何も言わず、ただ私の話を相づちを打ちながら静かに聞いてくれた。


私は青年の方を見る、聞き終えた青年は口を開き、私に言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る