第12話 どうして、目を覚まさないの

 遺跡とルルイエ二号の浮上から一週間と少し。もう明日からは二月だ。


 私は足以外はある程度動かしても平気になってきた。体力もそこそこ戻ったっぽい。足だけは、皮膚移植感いっぱいの見た目で中身も何とかくっついている状態らしい。ギブスで見えない。

 石の修復力が体の状態を察して、生命維持を優先して普段と逆に内臓などの組織の修復を優先するように順序付けしてるのだろう、と先生は言っていた。事故以来の、「唱石がなかったらしんでる」パターンかぁ。


 先輩たちは起きて自分で歩いたり部屋の外で軽く散歩する程度に回復した。カナデ先輩はやっぱり訓練しようとしてマモルさんと先生に説教された。


 ネイさんだけ、まだ目を覚まさない。内臓や脳に異常は見つからないそうだ。なぜ目を覚まさないのか、誰にも分からない。




 そして、ネイさんのほかにも、世界中、とくに海に面した街で、目覚めない人たちがいるということを知った。目が覚めても、絵や文字で何か書き残そうとし始めたり、死のうとしたり、逆に死ぬことを異様に恐れたりするようになるなど、異常な行動をとる。

 ニュースはニュージーランドでも、日本のでも、アメリカのでも、異常行動の話題ばかりになっていた。


 人間だけじゃなく、海の動物や鳥の様子がおかしい。異常行動という言葉ばかり聞こえるし耳に入るので、私は部屋でニュースをつけるのをやめた。先生も、本社の報告や連絡以外は聞かないようにすると話していた。

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