第2部 紫陽之御子

二人の運命をわかつのは…

第21話 側侍退官

青羅王妃と王公主は幾日か滞在して国へと帰り、追うようにして照王夫妻も王領へと帰った。

それから平和な時が9年過ぎて、黎翔と瑩珠は18歳になっていた。

冬が終わろうとしていた頃、瑩珠は側侍の職を退官することになった。

「玉蘭!」

「あら、今成と宇南ではありませんか。どうなさいました?」

呆れた様に宇南が言った。

「”どうなさいました?”ではありませんよ…側侍を退官すると聞き及びましてね?」

「えぇ、そうですわ」

「会えなくなるじゃないか。折角我らは友として9年の時を過ごしたというのに…なんだ、嫁にでも行くことになったのか?」

剣を腰に吊るし、武官の姿をした今成が悲しそうにしていた。

「お嫁…そうですね」

あからさまに今成ががっかりしたがすぐ立ち直り、瑩珠の肩を掴んだ。

「我はかねてから玉蘭を妻に迎えたいと思っていた…我のところに嫁げよ。家格も釣り合うし、将来も安泰だ…今からでも遅くない、我が妻に!」

「ですが…」

「相手は誰だ?玉蘭から言いづらいなら我が相手方に話をしよう」

瑩珠は困った表情をした。さすがにこの場で皇太子妃であると明かすわけにはいかない。黎翔には学宮に行っていることは明かしてあり、その時1つ約束させられた。それが…

「分かったわ。相手の方から言い寄る者は全員連れてくるようにと言われているの。今日の夜、お暇かしら?」

今成は即座に頷いた。玉蘭は宇南にも来るようにと言った。

「どこに行けば良い?」

「そうですわね…月が昇ったら、鳳城の正門にいらして?迎えをそこに行かせますから。2人にはちゃんと言っておかねばならないから」

そうして3人は各々の仕事に戻っていった。

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