第17話 先之王朝
100年前。
名君と呼ばれた燈帝には冊立したばかりの皇太子がいた。
名は
燈帝は永良を呼び寄せ、城下を見下ろして語った。
「のう、永良や。そなたが帝になったらこの平安なる世を続けてくれよ?余達に
「肝に命じて精進いたします、父上」
永良は5歳とまだ幼かった。
そんな微笑ましい親子が引き裂かれたのはその数日後。
永良は母である
「皇宮の方が騒がしゅうございますね、殿下」
念賢妃がそう言うと、皇宮に繋がる
「え、永良っ!すまぬっ」
「どうなされましたのっ、大家」
息を切らせながら燈帝は叫んだ。
「皇后が…皇后が裏切りおったっ…!
「なんと…母后陛下が…?」
栄皇后が一武官である想い人を連れ込んで帝位簒奪を企んだというのだ。
「皇太子永良…勅命である。」
父の改まった口調に姿勢を正した永良は拝命する礼をとった。
「城外へ逃れ、生きよ。何があっても生きるのだ…!誇り高き紫陽の血脈を途絶えさせるでないぞ…」
「御意っ」
永良は重圧を感じたが、それを感じさせぬようはっきりと応えた。
「あぁ…永良様…」
念賢妃は静かに涙を流した。
「
「永良様、大家と私のことはお気になさらず、お心だけに留め置かれませ。城外へ出られましたら念家へ参られて事をお話しください。私の親族が命をとして御護り申し上げますでしょう」
「
名である琴風と呼ばれた念賢妃は頭を振った。
「私は残ります。寵妃の不在はすぐに明らかになってしまいますもの」
「だが…」
念賢妃は毅然として言った。
「賢妃の務めです。菊花を賜った賢妃が菊のようにこの大家の花園に咲かぬで
「すまぬっ…」
念賢妃は永良に向き直り言った。
「永良様。母として務めを果たせなかったこと、申し訳なく思います。御身に憂いなくと願っておりましたがそれも叶わず…どうか健やかに、大家の血筋をお繋ぎください。私は御身のために
こうして永良は城外へと出、禁衛軍の一人であった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます