第4話 皇太子妃

照姫と呼ばれた少女は跪いたまま深く拝礼をした。するとしゃらりと涼やかに歩揺が鳴った。

照王ショウオウが姫、照凰琳ショウオウリンが叔父様にご挨拶申し上げます。」

「よくぞ参った。照王大兄が早くても構わぬと申されたのでな。」

「かようにお早いお召し、感謝いたします…」

彩結は微笑んで言った。

「凰琳、久方ぶりですね。息災でしたか?」

「はい、叔父様と叔母様の皇恩を賜りまして。王家は皆、健やかにございますわ。」

「皆への紹介がまだでしたわね。先々帝の皇兄に当たられる方の曾孫ひまごの姫君で、大家の姉公主様の姫、瑞王公主ズイオウコウシュであらせられます。」

すると高淑妃が一礼して口を開いた。

「恐れながら、大家。」

「どうした、淑妃よ。発言を許そう。」

「かようにも尊いお血筋の姫様はいずれの子妃様とおなり遊ばすのでしょうか?」

栄貴妃は鋭い視線を高淑妃に向けた。

「淑妃、失礼ですわよっ。寛大な御心でお許しくださいませ。」

「構いません、貴妃様。」

凰琳は許し、黎翔を見てふわりと微笑んだ。

「凰琳は皇太子妃とする。皆、重く尊ぶように。」

全員拝礼し唱和した。

「照皇太子妃殿下、千歳。」

黎翔は暎帝を仰ぎ見て言った。

「父上、妃に声をかけても?」

暎帝は苦笑した。

「そなたの妃だよ。余が止めることなどない。」

「ありがとうございます。凰琳、久方ぶりだね。5年ぶりだろうか?」

「左様にございますわ、鸞様。本当に…お会いしとうございましたわ。」

黎翔は上座から段を降りて凰琳の前まで来て手を差しのべた。

「我の妃になってくれるか?凰琳」

凰琳は花が咲いたような笑顔で微笑んで応えた。

「えぇ、今世も来世も、御身と共にありましょう。」

黎翔の手を取り、共にその場全ての者に礼をとった。

「父上、母上、母君方。凰琳を妻とし、務めを果たしてゆきますこと、お許しを。」

「お義父様とうさま、お義母様かあさま義母君ははぎみ様方。殿下を支え、宮を統べ安んじて参ります故、御教授の程、よろしゅうお願い申し上げます。」

「御心のままに、両殿下。」

こうして凰琳は皇太子妃として東宮に住まうことになった。

後世に伝わる、名君とその皇后はその一歩を踏み出したのだ。

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