第2話 真名下賜

鸞が誕生してから5年の時が過ぎた。

鸞は皇帝の子供の住まう帝子宮を従者である念昇勇ネンショウヨウと共に散歩していた。そこに四妃第二位の高淑妃の御子、異母兄にあたる王子、ユウが近づいてきた。

「鸞皇子殿下、ご機嫌麗しく。」

優は流れるような作法で跪いた。

「優兄上、お立ちください。堅苦しいのは嫌いなのです。」

「そうは言っていられませんよ、殿下はいずれ世嗣せいしとなられると皆思っております。」

鸞はそう言われた途端、暗い顔をした。

「どうなさいました?殿下。」

「優兄上は5歳で真名を父上から下賜されたと聞きました。なれど…我はまだ真名を頂けるというようなお話が出ておりません…我は皇子としてまだまだであるということでしょうか?」

父帝陛下ふていへいかの御心の内は分かりかねますが、殿下は皇子としてご立派にお勤めになられていると思いますよ。きっと御身を驚かせようとして御隠し遊ばされているのでしょう。」

「元気づけられました、兄上。お礼申し上げます!」

そんな会話から2年の時が経ち、鸞は立太子した。

「第一皇子、鸞。」

「はいっ。」

「そなたを皇太子とする。よって余からの贈り物だ、真名を授けよう。黎翔レイショウ

鸞、改め黎翔は嬉しそうに拝礼した。

「拝命いたします!」

彩結が絹団扇を揺らしながら微笑んだ。

「凛々しいお姿ですこと…黎翔、そなたはいずれ国を統べる方。兄弟姉妹と仲良く、礼を尽くすようにね?」

真名と共に宝冠を授けられ、後宮である後華宮コウカグウの中、鳳城ホウジョウと呼ばれる外朝に繋がる龍門のすぐそばに東宮トウグウを与えられた。この日から黎翔は兄弟姉妹と暮らしていた帝子宮を出、東宮で生活を始めた。


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