魔法少女レルク

神通百力

最凶最悪の殺人鬼

 私は魔法少女レルク。魔法王国スレグナからこの人間界にやってきた。

 さて、どの家に盗みに入ろう。あそこのボロアパートに盗みに入ろう。

 周りをキョロキョロと見回し、人がいないことを確認し家に入った。

 なんということだろう。家具が一つもない? どうやって生活しているんだろう。まぁ、どうでもいいけど。金目の物はなさそうだし、ほかのところに行こう。

 ガチャっとドアが開く音がした。やばい家の人が帰ってきた。ど、どうしよう……。

「む。人の気配がする。泥棒か」

 わ、わ、み、見つかる~!

「何だ貴様。俺が最凶最悪の殺人鬼と知ってて家に侵入したのか!!」

 殺人鬼? ラノベでは殺人鬼って強いよね。どうしよう。成せば成るか。

「わ、私は魔法少女なんだからね!」

「何故、ツンデレで言ったのだ?」

「うっ、うるさい!」

「まぁ、いいだろう。俺の名は、嘴蟋蟀くちばしこおろぎ。貴様の名は何だ」

 泥棒に名前を名乗るなんてどういう神経してんだろうこの殺人鬼。

「何で言わなきゃならないの。名乗っても、私にメリットなんてないのに」

「名乗れ! それが人としての礼儀だろう!」

 殺人鬼に礼儀を問われるなんて思わなかったよ。

 殺気が凄まじいよ。うう~。

「わ、分かったわよ。名乗ればいいんでしょう。私はレルク。これでいい?」

「いや、まだだ。頬をプニプニさせてくれ」

「変態!?」

「フフフ。俺の通り名は『変態殺人鬼蟋蟀』だからな」

「そのまんまじゃない!」

 なんなのよ~こいつ。

「特別に俺の奴隷にしてやってもいいぞ」

「奴隷って。そこはせめて妹でしょ!」

「いや、そこは弟子だと思うが……」

「え? あ、えっと……」

 どうしよう。失敗しちゃった……かな? うう~。

「レルクと言ったな。お前、可愛いな」

「はう!!」

 か、可愛いだって私が?

「俺の妹になれ。なってくれたら、いいことをしてやろう」

「いいことって?」

「そうだな。頬をプニプニしたり、プニプニしたり、あとは……プニプニしたりだな」

「一緒じゃん! どれも!」

「む。不満か。まぁいいだろう。で、どうする?」

 眼つきが鋭い。怖いよ~うう~。

「うっ。分かったわよ。なればいいんでしょ!」

「兄と妹となった記念にどっちが多くの人を殺せるか勝負しよう」

「え? どっちが多くの人を殺せるか勝負?」

「そうだ。俺は殺人鬼だから人を殺すのが趣味なんだ」

「あのさ、ちょっと質問していい?」

「なんだ」

「どうやって生活してるの? 何もないんだけど」

「あぁ、寝るためだけにつかってるから何も置いてないんだ」

「そうなんだ。食事はどうしてるの?」

「人を喰ってるから問題ない」

「人?」

「殺したついでに食べてるのさ」

「っっ!」

「そんなに驚くことないだろう」

「驚くわよ。人を食べるなんて」

「聞くが牛を食べたといったら驚くか?」

「驚かない」

「だろ。人を食べるというのは、牛を食べることと一緒なんだ。人も牛も動物という括りに変わりはないんだからな。肉ということにも変わりはない。だから驚く必要はない」

「なるほど。納得したわ」

「それじゃ、先刻言った勝負をやろう」

「人を殺したことないんだけど。魔法は優れているけど人を殺す技術は全然駄目」

「そうか。では、俺が人を殺す技術を叩き込んでやろう。我が妹レルクよ」

「蟋蟀お兄ちゃん」

「明日から特訓だ!!」

「うん!」

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