第25話 宣戦布告

「あの方は特別だ、血筋はもとより天秤を持っておる」

「真、天才(とくべつ)だ、あの若さで腕は皆伝に達するらしい」

「そうだ、我々とは違う存在(とくべつ)だ、まさに砂が水を吸うが如くあらゆる技を収めていく」

「その通り、戦に関わる事なら何でもだ。正に戦の申し子(とくべつ)な存在だ」

「あのお人は、常人とは違う(とくべつ)だ、次々と講師を打ち負かしていくと言う」

「あぁ、我々には理解できない存在(とくべつ)だ。あの速さについていけるものなど何処にいると言うのだ」

「あれは異常(とくべつ)だ、我が子と遊ばせろだと?冗談はよして下さい」

「あれは化け物(とくべつ)だ、あの目で見られるだけで肝が縮む」

「あれは怪物(とくべつ)だ、人の理など通じんよ」


「………………そう、彼女はトクベツだ」





「うむ、アレを使うか。弁慶、荷電粒子砲の用意は出来るか」

「可能でございます」


 今日も今日とてシミュレーション、ステージは博多駅、また同じ所で戦うとは限らないが俺にとってはそっちの方がリアルティがある、まぁ戦力にならない俺は、唯の見物人としての参加なのだが。

 そして何度目かのそれが終わった後牛若はそんな事を切り出した。

 荷電粒子砲。荷電粒子を、加速器で光速近くまでぶん回して、それを弾丸代わりにする兵器だったか。SF作品ではおなじみの最終兵器の一つだが、こちらの世界ではまだまだ未来の兵器、たしか加速器の小型化や莫大な電力がネックだったとか。


「うーん。まぁものは試しだが、為朝の旦那あいてか」


 だが、継信さんの反応は今一のご様子。派手好き高威力好きのこの人なら喜んで使いそうなものだが。


「まぁそりゃ否定しねぇけどよ」


 継信さんは俺の軽口に笑いを飛ばしながらこう続けた。


「旦那相手にアレを使うのには、利点と欠点がある。

 利点は流石の旦那でもアレを食らえばひとたまりもない……と思う、いや流石に、多分。

 元々大規模要塞とかそんな感じの、バカでかくて分厚くて頑丈な建物とかをブッ潰す為の兵器だからな。あれを食らえば人間なんか影も残らねぇ。

 欠点としては、繊細で小回りが利かないって言う点だ。威力は申し分ないが、砲撃までに多少の時間と手間がかかる。まぁ元々対城兵器みたいなもんだからな、本来の用途に使うなら問題はないんだが、相手が旦那の場合その隙が問題となる」

「そんなにか?戦艦の主砲で人間を狙うようなもんだろ、効果範囲だって口径サイズと同じと言う訳じゃあるまいし」

「いやー駄目だろうな。旦那の天性の勘ならまず間違いなく嗅ぎ当てる。って言うか以前、業を煮やした敵さんが使おうとしようとしたことがあってな。

 勿論正面切って狙った訳じゃねぇ、遥か離れた山の中腹から、徹底的な偽装した状態からの砲撃だったが、あっさりとそれに気づいた旦那は、それが射撃される前に一矢ぶち込んだ」

「……結果は?」

「大爆発。砲が暴発して山の高さが半分になったよ」

「……わーぉ」


 そんな兵器を運用する方が悪いのか、そんな兵器をぶち抜いてしまうあの人が規格外すぎるのか。もうなんだか、訳が分からん。


「まー、確かに旦那は規格外だよな。俺らの世界では素戔嗚の生まれ変わりだとか、八岐大蛇が化けて出たとかよく言われたもんだ」

「例えとして出てくるのが人間じゃないな」

「ははっ、大将も見てんだろ、それ程の人だって事だ。けど大蛇ほど優しくは無いよな、あの人は酔いつぶれて隙を晒すなんて可愛げはないからな」

「そんな事で、可愛げないとか言われてもな」

「あーけど、あの人が大蛇の生まれ変わりだったら、倒したら叢雲が貰えちまうな」

「そんなもん、何処にしまってるんだよ」

「いやー、あの丈夫さは骨に仕舞っていても全く驚かねぇけどな」


 等と、和気あいあいと軽口をたたき合っているうちに、次のシミュレーションの準備が終わる。忠信さんが来てくれたおかげで、怪しい薬で無理矢理働かされ続ける継信さんの姿が消え、俺の精神衛生上非常によろしくなった。


「デカイな」


 件の荷電粒子砲を見た感想は先ずそれだった。砲身を除いてもハイエース程度のサイズがあるだろう。どう見ても個人携帯装備でなく、自走砲とかの類だ。


「あの、弁慶さん?」

「私は携帯できますので問題はございませんであります」


 あぁ、100の携帯武装とかの設定は生きてたんだ。多分条例とかで決まってるんだろう、グレーゾーンどころかぶっちぎりでアウトの様な感じがするが。



 荷電粒子砲の運用について弁慶さんに聞いてみたが、やはり扱いが難しい兵器と言った感じだ。

 まず、展開速度。通常なら1秒かからず展開できるが、こいつの場合30秒は掛かってしまうとのこと。

 次に攻撃までの時間。起動し射撃可能となるまで15分はかかるとのこと、あの鬼に見つかりませんようにと祈るには15分は長すぎる。

 最後に射撃間隔。次弾射撃まで5分はかかるとのこと、これこそ無理ゲーだ。一発限りと思っていた方がいいだろう。

 全く、相手があの人でなければ正しく必殺の兵器と言えるのだが、人外レベルの戦闘力を持つあの人だと心もとなくなってしまう。それどころか、迎撃され自爆死する未来が濃厚に見えてしまう。



「……ふむ」


 荷電粒子砲運用下での幾度目かのシミュレーションが終了した。成績は大幅に向上、成功率は無限大に上昇した。と言うか今まで成功したことが無かったのが初成功したと言うだけなのだが。


「どうした牛若?何か不満でもあるのか?」


 散々と山の様な敗北の末ようやく勝ち取った勝利を後に、なぜか腑に落ちない顔をしている牛若に声を掛けると。


「やはりこれは仮想試合、某の目算ではおそらくは通用しないでしょう」


 牛若はあっさりとそう切って捨てた。


「それではいかがいたしましょう、為朝様の能力を向上させて再計算いたしますでございますか?」

「いや、その必要はない、と言うか無駄だ。叔父上の怖さはその様に計算で現れない所にある。これ以上計算上の叔父上と試合するのは害悪となるだろう」

「了解でございます」


 そう言い、あっさりと弁慶さんは引き下がる。

 今更、今更だ。VRの中とは言え散々血反吐を吐いて爆死して惨死し続けたことをあっさりと『無意味だった』と切り捨てやがった。

 ちらりと、佐藤兄弟の方を向くと二人ともしょうがなしと言った顔をしている。


「おい、牛若。だったらどうするんだ?」

「んー、まぁ砲は折角用意したので囮にでも使いますか。一射無駄にできますし。後はまぁ出たとこ勝負ですな」


 はははと笑いやがるが、やはりこいつはどっかぶっ壊れているのだろう。あの鬼と無策で戦う?正気の沙汰ではない。

 だが、俺も戦闘面でのアドバイスなど何も浮かばない。正直あの目を思い出すだけでまだ、背中が震えてきそうだ。けど、もう一つ疑問がある、それはこのところずっと抱えていた疑問だ。


「……あと、もう一つ。お前は戦闘訓練ばかりやっているが、為朝さんを説得するのは諦めたのか?交渉について考えてはいないのか?」

「そっちこそ、正しく出たとこ勝負ですよ。あの叔父上相手に杓子定規な官僚答弁なぞ用意していたら、逆効果です。ありったけの思いを込めて正々堂々命乞いするまでです」

「……、そうか。まぁお前がちゃんと考えているのならそれでいい。俺は陰ながら応援することしか出来ないが、相談ならいつでも――」

「はっ?陰ながら?何言ってるんですか主殿?勿論同席して頂くに決まっています。交渉決裂した際、主殿が傍に居なければ八正が使えないではないですか。主殿は某を死なすおつもりですか?」

「えっ?嘘、何それ怖い。俺嫌だよあの人怖いもん」

「叔父上の一射を受けておいてその軽口をたてる人はおそらく主殿が史上初めてでしょう。これは某もますます安心できると言うものです」

「一射違う!確かにぶち込まれたけど、アレは俺であって俺じゃない!生身で受けた骨も残ってねぇよ!」

「ははは。某と主殿は一心同体、主殿を残して先に逝くことなぞ某がゆるしません」

「ふざけんな、最近でもここ一番の笑顔しやがって!そのセリフは厄介ごとに巻き込む奴が言うセリフじゃねぇよ!」


 ぎゃあぎゃあと、取っ組み合いが始まる。とは言っても真一の攻撃を牛若が一方的に捌くのみだが、それにしても最初の頃比べれば、牛若の捌く手が2本に増えている当り、多少はこなれている感が見えてくる。

 もっとも、指1本で捌いていた頃を知るのは当の2人だけなのだが。



「兄上、あの2人は何時もあのちょうしなのですか?」

「はっはー、あんなもんだ。中々やるぜあの大将は、戦はからっきしだが肝だけは太ぇ。並の人間なら仮の姿とは言え、旦那の射を受けてもう一度立ち上がろうなどと考えもしねぇだろうな」


 じゃれあう2人を見守りつつ、継信はそう言い暖かく笑った。





「物の怪だ。奴は鬼だ。」

「正しく、人の子とは思えん」

「見よ、あの体躯、あの風貌」

「見てくれだけじゃない、あの態度、あの気性」

「全てが己の力の中にあると思っておる」

「なんだ、何なのだ。違う、違う、違う!貴様は我が子ではない、私の息子を何処にやったのだ!」


「…………下らん」





 某所、高級ホテル最上階スイートルーム。豪華絢爛なその部屋に1匹の鬼が居た。鬼は2人掛けのソファーにどっしりと腰をおろし、悠々と酒精を煽っていた。

 カラリと氷の揺れる音がする。度数の高いその酒をロックで流し込む。普段は飲まない種類の酒だ、ふわりと芳醇な香りが周囲に漂う。

 だが、鬼には度数など関係が無い。その鬼には毒など効かない、酒も水も変わりはしない。ただ、用意されていたので飲んでいるだけだ。


 壁には大きなテレビが掛かっている。鬼は静かにそれに映る映像を見ている。

 流れる映像は戦いの記録だ、第1次、第2次、中東、アフガニスタン……、この世界で行われたあらゆる場所の記録映像が流されている。

 戦争の悲惨さ、無意味さ、残酷さ。数多の兵器に蹂躙し、蹂躙され、数多の人々が殺し、殺される。それは正にこの世の地獄だった。

 だが、鬼はそれを酷く退屈そうに眺めている、まるでこの世界の戦争があまりにも低級、この世界の戦力があまりにも幼稚と感じており、興味のない大の大人が幼稚園のお遊戯会を眺めている様だった。


 ふと、鬼が窓に目をやる。カーテンは開け放たれており、そこには煌々たる光の海、人類の築き上げて来た文明の夜景が広がっている。鬼はニヤリと笑みを浮かべた後、興味を無くしたように退屈な映像に視線を戻した。

 その後、時間を図ったかのように扉がノックされる。鬼は動かない、返事もしない。するとカチャリとノブが回された音が鳴る。ドアは勿論オートロックであり、内部から開けないと言うことは、ドアを開けた人物は鍵を持っている者と言うことになるのだが。





「牛若様、為朝様の居場所が判明しました」


 牛若の、特訓やめた宣言の翌日。吉野さんが唐突に来てほしくあり、来てほしくなかった知らせを伝えて来た。


「ほう、何処だ?」

「東京でございます」

「ふむ、ならば義盛の網に引っ掛かったのか」

「いえ、作業の合間に。この国の全ての監視カメラを洗い流したら偶々見つけました」

「ふむ、ご苦労」


 相変わらず、スケールの大きなことを酷くあっさりと言いやがるのはほっとくとしても、ついにこの時が来たと言った。そう言えば牛若に為朝さん説得について聞いていなかった。俺も同席することになっている以上、聞いておく権利はあるだろう。


「説得の方針ですか、勿論決まっておりますよ」


 その質問に対し、さらりと何でも無いように牛若は答える。


「大体、伊勢は難しく考えすぎなのです。叔父上を説得する方法なぞ簡単でございましょうに」


 そう言って、牛若が続けた答えに俺は唖然とするしかなかった。

 ……って言うかやっぱり馬鹿だこいつ。





 都内の高級ホテル、ドレスコードに引っかかり「貧乏人はお帰り下さい」と大人の口調で追い出されるのではないかと心配していたが、牛若の自信あふれる歩き姿か、弁慶さんの美貌によるものか、あっさりとロビーを抜けた俺たちは目当ての最上階スイートルームへと進む。

 エレベーターにはカードキーを差し込むところがあり、最上階へはそれを使わなければいけないが、この程度のロック弁慶さんには有って無きが如しだ。スルスルと我が家の様に迷いなく進み、ドアをノックした後スイートルームのロックを解除した。そして弁慶さんはドアを開け俺達に入室を促した。





「お久しぶりでございます、叔父上。この前は挨拶もせず申し訳ございません」


 ずかずかと勝手に乗り込んでいった牛若は、部屋の主の返事も待たずどかりとソファーの対面に腰を下ろす。勿論俺にそんな度胸はない、と言うか目の前の人物の視界に入る事さえ正直御免こうむる。俺は牛若の背後に立つ弁慶さんに隠れる様な場所をキープして部屋の空気と一体化することを試みていた。

 しかし、ヤバイ。この前は10kmの距離を隔てた相対だったが(まぁあの時の俺にその距離が意味あるかは置いといて)実際にこうして生身の体で目と鼻の先に居ると、何と言うかヤバイ。語彙が消失してヤバイと言う言葉しか出なくなってくる。

 目の前にいるのは圧倒的存在感を放つ生物。一度目にしたら二度と忘れることは無いだろう呪いじみたオーラ。本来広々としているはずのスイートルームがこの人が一人いるだけで、窮屈に見えてしまうほどの巨大な異物感。


「それで、この国を観光したご感想はいかがでしたか。山海の幸が豊富で豊かな国です満喫頂けたのでは」


 ペチャクチャとよく回る牛若の刈る口に、ついには鬼が地の底からにじみ出るような笑いが漏れる。


「道化芝居はもう良い、要件は何だ」

「はっはっは、道化と言うならば、叔父上とて同じこと。どこの誰様の策に乗ったかは知りませんが。何することなくこんな所で時を費やしている叔父上に言われたくはありません」


 軽口ついでに、相手を煽る牛若、相変わらずこいつの恐怖心は人とずれている。頼むからニトログリセリンでお手玉するのはやめてほしい。


「やはり、こちらの世界にも叔父上の興を引くものはございませんでしたか」


 牛若は少しトーンを抑えて会話を再開する。ここからギアを上げていくと言う事だろう。


「ふっ、期待は……していなかったがな」


 鬼は静かにそう漏らす。

 鬼が望むのも、それは――


「まぁ、そうでしょうね。某の目から見てもこの世界の民は脆弱すぎます、科学技術もそれしかり。叔父上が望むような戦などこの世界にはございません」


 戦いだ。全身全霊を掛けた血が沸くような戦い。命を燃やし、命を食らい合う戦い。彼方の世界で最強を超え無敵となった彼には、対等の存在などいやしなかった。孤高の最強、孤独な強者、その者が求めたのは孤独を埋める対等なる存在だった。


「はっ、それを人に求めるのはとうに諦めた」

「ほう、では何を求めます?」

「世界は俺に等しいものを用意し忘れた、ならばその無聊は世界に慰めてもらう」

「ははっ!」

「俺が求めるのは世界を射抜く一矢。俺は俺の力で世界を貫く」


 馬鹿だ、馬鹿がいる。

 この人が言っているのは比喩でない。人間社会を混乱させるとか、そんなサイズの話をしているんじゃない。文字通り、物理的にこの星をぶち抜き破壊する力を求めているのだ。

 彼の意思が、言葉でなく心で理解できてしまう。そんな重みをもつ発言だった。


「あんた馬鹿か。そんな事して何になる」


 つい、思った通りの言葉が口から出る。そんな事を言っても何も意味が無いのは分かっていたとしてもだ。

 しかし鬼には俺の発言など聞こえていない、彼が人として認めるのは戦闘力を持つ者のみ。それ以外は路傍の石や草むらの虫にしか過ぎない。

 静かに、握る拳に力が入る。


「なる程、その為に我らと戦うと!機が訪れたと!果てさて、我らを打ち倒したとして世界を破壊する力が手に入るとは思いませんが。叔父上の中では当然の通過点なのでしょう! 

 それは良いです、それで良いです。

 では、某の言葉を伝えさせて頂きます。源為朝、無双の勇者、無敵の兵にして世界の破壊者にならんとするものよ!」


鬼の勢いに飲まれたのか、乗ったのか。牛若は狂気じみた上機嫌で言葉を紡ぎ――


「某と共に世界を救いましょう」


 静かにそう締めくくった。


「くくくっ、はっはっは!」


 呵々笑い。鬼は牙をむき地獄の太鼓を打ち鳴らす。


「そもそも、皆勘違いを、見て見ぬふりをしている。叔父上は唯一人、そこに在るだけです。叔父上の前には源氏も平家も、それ以外もありはしない。

 しかし、叔父上。今回は、今回の世界の危機に当っては、源氏の、この牛若の味方となって頂きます」

「如何にして?」


 鬼は上機嫌でそう問いただす。


「無論戦にて」



 ああ言いやがった、昨夜聞いた通りの回答だ。因みに居合わせた継信さんはニヤリと笑い、忠信さんは困ったように笑っていた。ついでに俺は屋島さんに胃痛を訴えていた。

 戦いを避けるための交渉なのに、自ら進んで戦いに行ってどうするのだ。それとも為朝さんは実は話の分かる人で、可愛い姪っ子の為に死人が出ない優しいルールで戦ってくれるとでもいうのだろうか。

 だが、正面に座り狂気じみた獰猛な笑みを浮かべる男からはとてもそんな気遣いは感じ取れない。


「いつやる?今からでも構わんぞ」

「はっはっは。叔父上は戦を求めますが、虐殺に興味はございますまい。暫し……そうですな、時は3日後、場所は……折角ですので我らが再開した博多でいいでしょう。

 弱者の戦を当とお見せいたします。正々堂々不意撃って見せますので、博多にて鏑矢を撃ちかわしましょうぞ」

「くくく、鏑矢とは今狙いをつけているアレの事か?あの程度が工夫と言うのなら今すぐ殺すぞ?」

「派手な音がします故あれでもよいのですが、隙あれば射殺すため戯れに狙っているだけです。本番ではもう少し趣向を凝らしますよ」


 なんて奴だ、気づいてやがった。今この部屋は10km先から荷電粒子砲の照準が向けられている。撃ってしまえば俺達も巻き添えになるので照準テスト以外の意味は無いのだがそれでも気づいていやがった。先日の継信さんの話は眉唾物と思っていたが、聞くと見るとでは大違い、なんて化け物だ。



 そうして俺たちは3日後の決戦の約束を取り、魂まで刻まれるような、何処までも楽しそうな鬼の殺気を背中に感じながら、その部屋を後にした。

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