第2話 親父、来襲!

 突如何かが画面に映り込んだような気がした。

 俺は振り向く。


 俺以外に誰もいない聖域。

 その筈の部屋のど真ん中に中年男が1人立っていた。

 濃い色のそれなりに高そうなスーツをちょい悪風に着崩している。


 とっさに手元の攻略本を投げつける。

 だがそれはあっさりと受け止められた。


「久しぶりの再会にそれは無いだろう、息子よ」

 そのわざとらしい言い方が俺の頭脳の古い古いデータベースにヒットした。


「何だ親父か。何の用だ」

「久しぶりにここに帰ってきたが酷い状態だな。玄関だけは片付いていたが他はもう。掃除とかはしないのか」

「玄関は荷物を受け取る際に開けるからな。他は掃除の必要はない」


「口は達者になったようだな」


「20年も留守にしていた輩に言われたくない」

 この台詞だけは俺の本音だ。

 何で今頃帰って来やがった。

 もうこのまま誰にも会わずに朽ちていくつもりだったのに。


「おいおい、たかだか20年会わなかった位で拗ねるなよ」

 20年をたかだかと言っていいのはエルフとかドラゴンとか長命種の連中だけだ。

 そんな物リアルには居ない。


「あとな、このまま朽ちて死んでいくつもりだったとか考えているなら残念だが諦めろ。お前はそう簡単に死ねる運命じゃ無い」

 何だそりゃ。


 どういう意味か聞こうかと思ったが、もうそれも面倒な気がした。

 もうこの男の事は無視しよう。

 いない事にしよう。

 必要なのはこの男のクレジットカードだけ。

 それでいい。


「おっと、無視する作戦に出たな。なら強硬手段に出るぞ、いいのか」

 無視だ、無視。


「ならばこれではどうだ」

 親父は何かを取り出した模様。

 でも無視だ。

 そう思った次の瞬間。


 ズダーン!


 ドアを蹴飛ばしたような音とともに俺の体に衝撃が走る。

 何だ。

 何があったんだ。


 何か体の一部が熱い。

 見ると胸に穴が空いて、血があふれてくる。

 おい、まさか。


 何とか残っていた力で振り返る。

 親父が小さめの銃を右手に構えているのが見えた、

 そして親父は俺を狙ったまま右手の人差し指を軽く動かす。


 ズダーン!


 再び胸に衝撃。

 そして熱い感触。


 ああ、あの形はコルトのウッズマンだな。

 口径は小さいけれど胸に2発も銃弾を受けてはまあお陀仏確実だ。

 さようなら俺。さようなら世界。

 そしておまわりさん犯人は親父です殺人罪です銃刀法違反です捕まえて下さい……


 そう思ったところで親父の声がする。

「おいおい、何を死んだ気になっているんだ」


 えっ。

 そう言えば胸の熱さも痛みも消えている。

 でも服には穴が空いている。

 だが体は……傷が塞がっている!

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