世界に空いた穴の向こう側

相葉 綴

世界に空いた穴

 ある日、僕らの世界に穴が空いた。今や世界中で使われている暗号化技術に脆弱性、つまりはセキュリティの欠点が見つかった。いわゆるセキュリティホールと呼ばれるそれによって、世界中のすべての人々が悪意の標的として晒された。

 そして、僕らは日常を失った。

 僕らの立っている今この場所は、とてつもなく脆く薄い氷の上だ。でも、僕らはすぐに、それを忘れてしまう。そして、失くして初めて気付くんだ。それはとても繊細で、少しバランスを欠いただけで、いとも簡単に崩れ去ってしまうのだということを。

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