第11話非道な魔道士
「どっから話そうかしら。」
そう言った、ケールは神妙な面持ちであった。周りの住民も黙り込み、部屋の中には異様な空気が流れた。
前居た酒場とは思えないほど、ひどい有様であった。
「6時間前のことね。まあいつも通り酒場を営んでたんだけど、急に雷鳴がしてね。空は曇ってたから、ただ雷だと思ってたんだけど、事情は違ったわ。
一度悲鳴が聞こえたと思ったら、たちまち悲鳴が大通りの方から響いてね。そこには、この国の魔道士達と魔獣がいたわ。そして、住民を襲っていた。
魔道士達はCランク以下の劣性種族はいらないと言って、次々と住民を殺してったわ。そのあと、私は酒場に逃げ帰り、私の酒場を知っている住民達と共に隠れている。そんな感じよ。」
「劣性種族はいらないか…。」
俺はその動機に吐き気を覚えた。何を持って人間に優劣を決める、同じ人間なのに。魔力ランク、この仕組みは一体何なんだ。
俺はケールの話を聞きながら考え込んだ。
「つまり、使えない人間の排斥行動をしてる訳か。」
「まあ、そうなるわね。」
「何故、急にこのタイミングで起こった?前触れがあっても良く無いか?」
「多分だけど、国王が暗殺されて、代理の国王が過激派で、今の運動を行なってるわ。」
国王暗殺か…。これで、政治は混乱し、魔道士はその指導者に操られ、住民を殲滅してる訳か。
それだと、商業や農業などが成り立たなくなる。
住民を殲滅する意味が全くない。
「住民を殺す意味がどこにある?」
「それは私にも分からない。」
まあ、そうだろうなと思い。俺はそこで話を切った。
「色々とありがとう。いつ敵が攻めてくるかも分からない。だから、残るけど良いか?」
「好きにしても構わないわ。」
俺は、今の話を聞き、殲滅する意図について考えた。
俺はこれまでの話、見てきた光景を思い返した。
この国について、悲惨な現状を見たが、人の死骸が全く無かった。魔獣の数がいくらなんでも多すぎる。
これから導き出される答えは…。
「人間を魔獣にした」ということだ。そして、魔龍を復活させ戦争を挑むと言うことわ、この魔獣は戦力になる。そして、食料や商業は他の国を侵略し、その国の商業などの利益を独占する。
そんな感じの目論見であろう。にしても、自国民を魔獣にするなんて、指導者はどんな神経してやがる。どうやって人間を魔獣にした…。
久しぶりに頭を使ったせいか、俺はめまいを覚えた。
「いくら考えても埒が明かねー。」
俺は頭を掻きむしった。周りの人間は俺の行動に対し、変な目を向けていたが、気にしている場合では無かった。
俺は息を落ち着かせ、これからの行動について考えた。
その時、遠くから大きな魔力が迫っていた。
かなり強大な、エルゼと同じ規模の魔力…。
そして、魔法によって酒場の天井が壊れ、酒場は大きく揺れた。
酒場には大きな悲鳴が走り、住民は怯え固まっていた。そして、住民は俺を見つめていた。
俺頼みって、訳か…。しかし、相手はエルゼ級の魔道士と見て間違いないだろう。
俺は外へ出向き、敵を探した。すると魔法の箒に乗り空中に浮いていた。髪はピンクというか赤いというか微妙なラインの色であったが、顔は童顔で、背もそこまで大きくなかった。
「幼女か?」
「いきなり、初対面の奴に幼女とは失礼だな、お主。」
お主とかいつの時代の人だよ。俺は心の中でツッコミを入れた。
「お主も魔道士であろうに、何故住民を殺さぬ。」
「いや、俺はこの国の魔道士じゃない。生憎他国の魔道士だ。殺す理由もどこにも無い。軽々しく、人の命を扱うな。」
「しかし、お主達が倒した魔獣も元は住民だ。お主の言葉には重みがない。ただの偽善者の言葉だ。
魔獣で襲ってくるから、倒した。中身は人間であっても。」
「実に最もな意見だな。まあ、その住民達を魔獣なら変え殺戮を楽しんでいる、あんたは極悪非道人だな
。」
「生憎、妾は殺していない。殺したのはB級魔道士という、傲慢な魔道士達じゃよ。妾は巨大な魔力があったのでな、気になっただけだ。」
俺と幼女の間にはピリピリとした空気が張り詰めた。
この空気はどうも気持ち悪い。俺はそんな感想を、抱きながら喋っていた。
「お前は、8人の枢要罪のうち1人だったりするのか?」
「ご名答。妾は、8の枢要罪のうち1人、【憂鬱】のレミス・アルディアナだ。以後、よしなに…。」
「別に挨拶しにきたわけじゃねーだろ。」
「話が早いのう。では、行かせてもらうぞ。」
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