第46話

を恐れすぎて、気づけば戦場から抜けだして町の外れで毛布に包まっており、すっかり沈淪して顔は硬直していた。志操は死にいたぶられて萎んでしまい、秋風に吹かれて蕭殺していた。 婉曲法


三人の少年はに追従してばかりいるを乱そうと、のをゆすり起こすように、ベッドの上に寝ているところへを投げつけた。それが蕭条たる級長の胸に火をつけ、日頃は気にならなかったクラスの悪童共に極端な瞋恚を抱かせた。 縁語


善良なを捕まえて良き人生を共にしようと追尋していると、いるわいるわで、善良そうな顔して影でゴミ箱をひそのままにしたり、をさすりながらにやにやを見たり、詳らかに語り始めたらが家に帰る時間になってしまうよ。どうして主我な輩ばかりなんだろうね、色々な男と経験を持ったおかげで簡単に情に流されない峻酷な女になっちしまったよ。 縁語


旅行が好きでになった友人の追善供養として、雲と紛うをあげながら高らかなをならして追想した。祝融によって奪われた命は須臾の間鉄のの嘆きと祈りに震えるだろう。 縁語


ぞ追慕することなかった叔父も、にアルバムを開いて兄の写真を眺めていた。消閑にしては顔が悲しげで、何時かしら悲しみに馴致してしまったようだ。 音彩法


浜辺にいる男達にとって津波に漁船が打ち倒されたことは痛恨であり、波のならない曲がりくねったごと遊びに思えた。年齢身分入り交じる参差な男達の中から嘆きと呻きが漏れ、向うの島に連なる翠巒にぶつかり、海鳴りと物寂しく共鳴した。 音彩法


っかり垂れてろな目で痛嘆するよりも、芝生の上で踊って、足を広げて、いえぇいぃ。墨染の作業服を着る黒人男性は素面に愛嬌を浮かべて腕をあげる。 音彩法


大量の荷物を積んだ車の背後に立ち、麦わら帽子を被った女は沈鬱なを晒す。必死に荷を積んでいる男との口論に気分を害されたが、二人の主張に通底のあることをどことなく気づいており、整斉できない荷物に文句をつけても、咳き上げるほどの感情の高ぶりを起こすことはできなかった。 掛詞


老人はあまりに痛をして、トイレを汚してしまった。興奮のあまり舌端に言葉はのらず、譫妄の真っ只中を必死に暴れまわった。 掛詞


若い女の裸体を凝視してしまうのは、性欲を持った男性の通弊なので、素敵な国の善隣として、糟糠のごとく真面目に取り合わないことだ。 掛詞


彼は十年前の試合を思い出し、。試合に負けて悔しがらない奴がいるだろうか、それは男なら誰もが持っている通有の反応だ。消えていった先蹤と同じく後遺症に悩まされながら、ボクシングを捨てきれずにうだうだしていることを闡明せずに彼は生きている。 活写法


たしかこんな話だった。穿。すると男のどんなところに惻隠を覚えたのか知らないが、詳らかに情報を教えて桁の多い小切手を手渡したらしい、これが仄聞した内容だ。 活写法


サリーを着る女とキュロットを穿いた男を突き合わせて、交通事故の状況を明らかにさせるつもりだったが、。空嘯いた二人に挟まれて、判事は忖度する気が失せてしまった。 活写法


照りつく太陽、木の葉のぴくりともしない無風、焼けた道路、滴る汗に吸い寄せられる埃、が彼を川に飛び込ませた。そそり立つ大廈の下での荒くれた仕事に没頭できず、過去の損亡は頭をめぐり突き膝のままぼんやりしていた。 括約法


花嫁の煌びやかな縁取り、斜光の煌く河辺の緑、藁束に笑い転げた晴天の夏、鋤についた土と諧謔、が棺桶を開いてつくねんと立っている老人を疎慢な生活へと駆り立て、あらぬ事柄を措定させてしまった。 括約法


上腹部のむかつき、下腹部の鈍痛、腎臓の痙攣、肝臓の反乱、が彼を蹲わせた。蹲踞ではない、損料が払えないわけでもない。 括約法


、祭りの賑わいは陽気に、またいやらしげに言っていた。塑性らしい泥人形は自分が目を離した隙に形を変えたらしく、先程よりも狡猾な口元に変わっていた。 活喩

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