第9話 旅の仲間か王の下僕か

 あれから7日がたった。

 ムッとした湿気のこもる森の中で蝉がジージーと鳴きはじめると、それだけで暑さが増す。

 見上げると、木々の青々とした葉の間から差しこむ太陽が眩しい。パムは思わず目を細めた。この場所のことを、たしか気比の浜で出会った、刺青の和人たちが木の芽峠と呼んでいた。

 気比の和人と、この木ノ芽峠の土蜘蛛は、いがみ合っていることはわかった。

 しかしなぜ、しばらくは鵺を追いかけていた気比の人たちはここまで襲ってこないのだろう。

 そんなことを考えながら、山を登る。

 木々が途切れた場所から下を見ると、木に囲まれた土蜘蛛の集落が見えた。

 鬱蒼と茂った杉に覆われている木ノ芽峠だが、この土蜘蛛が住処にしているあたりだけ拓けているのだ。いや、木に囲まれて、拓けた場所にこの人たちは集落を作ったのだろう。村の真ん中に一番大きな広場があり、その広場を囲むように、いくつもの家族が簡単な家を建てて住んでいる。その家も木と木の間に建てられているから、山の下からは屋根も見えない。

 おそらく木ノ芽峠をとおっただけでは、この集落の姿は見えないんじゃないだろうか。だから、気比の和人たちは、なかなか木ノ芽峠を襲いにくいのかもしれない。


 2羽のきじを弓で射落したところで、ハハカラは「帰るぞ」と言った。雉を縄で結わえると、肩に担ぎ、どんどん山を降りていく。


「おーい、ソシモリ、帰るって!」


 木に登って鳥を手づかみしようとしていたソシモリを、パムは大声で呼んだ。ソシモリはひと飛びで降りて来ると、「てめえが大きな声を出すから、あの鳥逃げちまったじゃねえか」と毒づく。


「はいはい」


 パムもソシモリの扱いに慣れてきたのか、軽くあしらうようになった。

 パムは、罠にかかっていたうさぎを担ぎなおし、ハハカラの後ろ姿を見失わないようについていく。ソシモリはその後をかったるそうについて歩く。


 この木ノ芽峠に来てから、パムは顔に刀傷のあるハハカラの家に世話になっていた。


 パムはあれから三日も寝込んでいた。金海キメを出てから、いろいろありすぎたのだ。寝込んでいる間は、ハハカラの奥さんに粥をもらい、看病してもらった。最近やっと元気が出てきて、ハハカラの子どもたちと遊んでやれるようになったところだ。

 今日はハハカラが猟に行くというから、とっくに元気に飛び回っているソシモリも誘って、猟についてきた。

 ちなみに、ソシモリは頭領の家に世話になっている。頭領は奥さんがなくなっているため、手伝いの女の人が食事を運んだり、世話をしてくれると言うことだった。ソシモリは初めの1日は寝込んでいたものの、その後は飯をもらってすっかり良くなっていたということだ。そのソシモリも、猟にはよろこんでついてきた。


 山の猟は面白かった。


 パムは海での猟しか知らないから、見るもの聞くものが新しくて、面白くて仕方なかった。


「おい」


 ソシモリは不機嫌に言いながら、後ろをヨタヨタとついて来る。


「猩々はどうなったんだよ、猩々は。オレ様はそいつを倒すって話しでここにいるんだよ。鳥なんか獲るためにこの山ん中にいるんじゃねえ」


 ソシモリは鳥が捕まえられなかった腹いせか、イライラしていた。


「オレ様は、あのクソ女を追いかけているんだ。あのクソ女の居場所をきけ」


 パムは忘れていたが、ソシモリはそもそもあのアカルとかいう女の子を追ってきたのだった。

 母の仇のスサノオの居場所をアカルが知っているという。

 しかし。

 金海の磯から海に流されてしまった今、アカルなどどこにいるものか……。

 パムが「いやあ、もうどこに行ったかわからないよ」と首を振ると、ソシモリが「はあ? 聞けって言ったら、聞け」と凄む。仕方なく、前を歩くハハカラのそばへ走っていく。うさぎが意外と重く、また担ぎなおす。


「アノ、ははからサン、女の子、知るカ? 白い服の女の子。海から来てないカ? 名前はアカルというヨ」


 もしこの辺りにアカルが来ているなら、海からやって来ているはずだ。ハハカラは、思いもかけない言葉を、あっさりと返してきた。


「ああ、あんたらが来る前に、来たって、うちのヤツが行ってたな。もう村じゃ噂になっているらしい」


 後ろを歩くソシモリに言うと、ソシモリは突然元気になってハハカラのそばまで走る。


「てめえ、嘘つくんじゃねえぞ。嘘だったらぶっ殺すからな」

「ハハカラさんは嘘つかないよ。村に帰ったら奥さんに聞いてみよう」


 パムが苦笑いしてソシモリに駕洛語で答えていると、ハハカラがふと、足を止めた。

 木々の間に何か赤いものがちらついている。

 ハハカラが「まさか」と呟くと、突然走りだした。パムも嫌な予感がして走り出す。


「なんだよ、てめえら。勝手に走り出すんじゃねえ」


 ソシモリの声を後ろに聞きながらパムは煙の上がる集落を見た。

 小さく、悲鳴が聞こえて来る。


「マヤカ!」


 ハハカラが叫んで雉をパムに渡すと、自分はに矢をゆぎから出し、いつでも弓を打てるように軽くつがえる。

 不意に目の前に赤い生き物が現れた。


 猩々だ!


 猩々がとうとうやってきた。


「ソシモリ、猩々!」

「は?」


 ソシモリは素っ頓狂な声を出す。


「なんだよ、こんなの?」

「こんなのだよ!」

「ははっ! こーんなヤツも倒せねえのかよ、あの村の連中は」


 ソシモリはせせら笑いながら軽く飛び上がり、両手を組んで、「あらよっ」と猩々に向かって拳を打ち下ろした。と、猩々は高く、樹上まで飛び跳ね、今度はこちらに向かって手にした棍棒を打ちつけてくる。


「わっ」とソシモリは驚いて尻餅をつく。

 もう避けられない。

 猩々がまたくるりと向きを変えてこちらへと飛びついて来るところを、ひょうフッと音がすると、次の瞬間には、矢が猩々を貫いていた。

 ハハカラが、肩で息をしながら弓を構えて、杉のそばに立っていた。

 

「村へ急ぐぞ、ツヌガアラシト!」


 ソシモリは、尻の埃をはたきながら、立ち上がると、なんだって? とパムに聞き直した。


「村へ急ぐってさ、ツヌガアラシトさん」

「なんで、あいつらはツヌガアラシトって呼ぶんだ?」

「前に言わなかったっけ?」


 パムは少し考えて言った。


「『ツノのある王』って意味だよ」


 ソシモリは少し満足してうなずくと、眼下の集落に向かって走った。


 ハハカラに少し遅れて村に着いたのだが、この7日間いた村とは、別の村のような様相だった。そこは、砂煙が立ち、女子どもの泣き声が響いていた。

 いつも明るく子どもたちが走り、女たちが元気に働きながら怒鳴り、男が勇ましく猟に出かける、そんな村なのに、今は泣き声が響き、悲しみが空気に漂っている。


「ハハカラさん、あんたどこに行っとったんじゃ。村がまた猩々にやられちまったよ」ジリが近づいてきて首を横に振った。

「畜生。こんな昼間っから出るなんて、油断しとったわ」

 ハハカラは、そう言うと、自分の家の方へと走って行った。ジリとパムも走り出す。


「マヤカ! 大丈夫か!」


 ハハカラは叫ぶように妻を呼ぶ。パムはハハカラに遅れて家へと行くと、ウサギと雉を取り落とした。家の中で、朝方まで元気に立ち働いていた奥さんが倒れていた。子どもたちが母親にしがみついて泣いている。


「うわあああああん、母ちゃん! 母ちゃんが!」

「マヤカ、どうした、マヤカ!」


 ハハカラが抱き起こすと、マヤカは力なく笑った。


「ごめんねえ、あんた。子どもたちに猩々が近づくから、甕を持って追い払ってたんだけどさあ、猩々の息を吸っちゃったみたい。ごめんね……」


 ハハカラはマヤカを抱きしめた。泣いているようだった。

 

「息を吸ッタ?」パムが小さく声に出すと、ジリが

「ああ」と呻いた。そして家の外へパムをそっと連れ出した。


「あいつら、時々ああやって襲ってきては、街をめちゃくちゃに荒らしていきよる。抵抗するとな、人に飛びついて顔に向かって息を吹きかけるんじゃ。息を吸ってしまうとな、しばらく眠りにつき、そして……突然苦しみだして死んでしまう」

「助かる人、ないデスか?」

「うーむ。今まで見たところでは、ほとんど死んでしまうんじゃ」ジリは肩を落とし、ポタポタと涙を落とした。


「マヤカさん、ええ人なのにのう」


 ふと見ると、ソシモリがハハカラの家をのぞいて立ち尽くしていた。

 村の人たちも、一人二人とやってきた。


「マヤカさんがやられたって?」

「お気の毒に……」

 

 そして村の人たちに連れられて頭領が駆けつけてきた。ハハカラとマヤカの姿をみて、嘆く。


「また哀しみが増えてしもうたのう。……猩々は斬ればその場は消える。しかし、いくら切っても、また新たにやってくる。一体あいつらがどこからきて、こんなことになっているのか……」


 頭領は、ソシモリの方へ近づくと、手を取った。そして、パムにわしの言葉を伝えてくれと言う。

「頼む、カヤナルミのうらでは、ツヌガアラシトが猩々を消してくれると言っておったのじゃ。助けてくれ。この村を、助けてくれ」


 パムも困ってしまった。伝えるのはいいが、とてもソシモリにそんな力があるとは思えない。力づくで猩々を倒しても、またキリなく現れるのでは、ソシモリもどうしようもないではないか。

「頼む」ともう一度、頭領に深く頭を下げられて、仕方なくソシモリに「こう言っている」と言った。


「頭領が、こう言ってるんだ。ナントカいう人の占いで、ツヌガアラシトが猩々を消してくれると出てるんだって。だから頼むから猩々を倒してくれって」


 それから少し考えて付けくわえた。


「猩々は、斬ってもまた現れるって言うんだ。そんなの、なんとかなる? なんとかなるなら、僕もお願いしたいな。マヤカさん、いい人なんだ。マヤカさんみたいな人を、これ以上増やさないように、猩々を倒してくれないか?」


 ソシモリは、憮然としていた。そこへ、村人が一人、走ってきた。


「頭領、キジが帰ってきました」


 ソシモリの手を取っていた頭領は、頭をあげると振り向いた。そこには、頭に雉の尾羽を飾った被り物をしたひょろりと痩せた男が立っていた。


「頭領、久しぶりだなやあ、おい」

「キジか、いいところへ来た。お主を待っておった」

「聞いたでえ、ツヌガアラシトがおるらしいなあ。びっくりしたわ。あんたがツヌガアラシトなん? ツノはないやないか」


 キジは、パムに近づくと、パムの頭をぐしゃぐしゃにしてツノを探した。パムは目の前で不機嫌な顔をしているソシモリを指差した。

 キジはカラカラと声高らかに笑った。


「そいつか! うわっ本当や、ツノが生えとるやないか!」


 ニコニコしながら、肩に担いでいた鹿の角を頭領に手渡していた。


「一つ向こうの山で獲ったばかりでっせ。体の方は、さっきユタに渡しましたで、みんなで食べてな。土産がわりや。そうそう。頭領、この間カヤナルミ姫に会って来ましたで」

「何、カヤナルミ姫に⁈」


 その名前が出ると、ハハカラの家の前に集まっていた村の人たちはざわついた。


「カヤナルミ姫」

「カヤナルミ様!」


 キジは、その様子に満足したようで、さらに声をあげて話しだした。


「忙しいと断られながらも、わしは負けまへんでしたで。頼みこんで頼みこんで、猩々について亀卜で占ってもらいましてん。ツヌガアラシトは必ず現れると出ましてな……ほら、本当にここにいるやないですか! 占い当たってるやないですか!……そんでツヌガアラシトは猩々を倒すために必要なんやけど、それだけやダメなんやって言われましてん……で、この後が大事でっせ」


 キジはもったいをつけて、まわりを取り囲む村人を見回した。


「いいでっか?……十種神宝とくさのかんだからってのがないと、ツヌガアラシトの力も発揮できないんですわ」

「トクサ、カンダ……カラ?」パムがたどたどしく繰り返す。

「そうそう、十種神宝とくさのかんだからや。宗像むなかた一族に伝わる秘法やけど、今は消息不明となっとってな、伝説の宝物や」


 パムがもう一度、「トクサノカンダカラ」と呟いた。宗像一族が何かはわからないけれど、今必要なものがトクサノカンダカラだということはわかる。


「ソレジャ、それを探ス、必要」とつづけた。キジとともに頭領もうなずく。まわりを囲む村人もざわざわとざわめいている。和語で進められる話に入れないソシモリがイライラしてパムの襟首をつかんで割り込んできた。


「おう、漁師。一体何を話してやがんだ。もしかして、トクサノカンダカラの話ししてねえか?」


 ソシモリの駕洛語の中に、『トクサノカンダカラ』という言葉が混じっていることにパムは驚いた。そして、その後につづくソシモリの言葉に、さらにパムは驚く。


「あのクソ女、そんな名前の袋を持ってるぞ」


 パムは咳き込みながら、ソシモリの手から逃れると、


「クソ女って、あのアカル姫?」

「クソ女って言ったら、クソ女だ。他にクソ女はいねえだろう。オレ様のお宝を持ってっちまって、海のどん底に突き落としやがった、あのクソ女だ! 十種神宝とくさのかんだからはなあ、あいつがオレ様に盗めって頼んだお宝だ」

「え?」

「あの辺りに、大きな騎馬族の家があったろう? あそこから盗んでこいって言ったんだよ。盗んできたら、このお宝の一部をくれると言ったんだ。それなのに……」

「それなのに?」

「お宝は山分けだというのに、そのまま逃げやがったんだ。その時になあ、あのきったねえ麻の袋がお宝で、その名も十種神宝とくさのかんだからだって言いやがったんだ」


 珍しくソシモリが饒舌に語る。よほど頭にきているのだろう。パムに顔をくっつかんばかりに寄せてまくし立てる。


「それから和國にいる、父親のスサノオのところに行くなんて言った。スサノオだぜ? あの憎ったらしいスサノオの居場所も知ってやがるんだぜ? オレ様に分けるって言っていたお宝も持って行きやがったんだぜ? 追いかけるしかねえだろ」


 そして懐から、ある塊を取り出した。


「クソ女を捕まえたら、これがなんなのかも、締めあげて吐かせなきゃあな」


 なんと、ソシモリは、海の上でアカルから奪ったあの剣の”柄”《え》をしっかり持っていたのだった。あの海のどん底に落とされて、さらに海の波に揉まれに揉まれたのだから、すでに無くしたのだと思っていたが、ちゃんと持っていたのだ。もしかしたら、これも十種神宝とくさのかんだからのひとつなのかもしれない。

 そもそも海を真っ二つに割ったのも、あの袋の中の道具だったのだとすると……アカルが持っている麻の袋が十種神宝というのは、本当にとんでもないお宝なのかもしれない。驚いてそれを身ぶり手振りを使って頭領に伝えると、今度は頭領が驚いた。


「アカル姫とは、この間浜へやってきた女子おなごのことかの?」


 パムが「タブン」と答えた。「白い服の女の子ト、黒い服のカラスみたいナ男の人、一緒」

 頭領が大声でまわりの村人たちに訊く。


「アカル姫がどこへ行ったのか、知っているものはおらんか?」

「浜に来たのは聞いてるが、その後どこへ行ったのかは知らんなあ」

「本当だ、どこに行ったんだろう」

「聞かないねえ」


 頭領がまわりの村人を見まわすが、皆首を横に振り、知らないと言う。

 顎をしきりにさわり唸っていたキジが、手をポンと叩いた。


「カヤナルミ姫にまた占ってもらったらどないです? まだ丹波におると思いまっせ」 

「占いでワカルカ?」パムの問いに、

「カヤナルミ様の占いに、わからないものはないで」


 キジが、自分のことのように自慢げにいう。村人たちはみな納得したようにうなずいている。カヤナルミ、先ほども頭領が口にした名前だが、一体どんな人物なのだろう。


「アノ……」と聞こうとしたが、

「それじゃ決定じゃ」という頭領の声の方が大きく響いた。


「カヤナルミ姫に占ってもらい、アカル姫を探し出す。そしてそのまま十種神宝をもて、ツヌガアラシトどのには猩々を退治してもらいたい。その旅に何人か出てもらいたいが、誰が行くかの?」

 頭領が一人一人の目をじっと見る。真剣な目で見返すものもいれば、目を逸らす者もいた。


「西の国については私が一番よう知っとるで、まずは私が行きまっせ」キジは近所へと使いに行くような返事をした。


「猩々も出るしの、西は今戦乱の世やから、危のうてしゃあないで、あと、ハハカラとジリとユタを連れて行きたいんやけど、頭領どないどす?」

「うーむ」頭領はしばらく呻いた。そして、目の前の家の中に視線を送る。

「ハハカラは、まだそっとしといてやってくれんか。ジリは行ってくれるか?」


 ジリは、うむ、と答える。「ユタには、わしから話をしておきますじゃ」


「せやな、頼むでジリ。ま、ハハカラはしゃあない、諦めますわ……」キジが肩をすくめていると、


「いや」


 と言葉を遮ったのは、なんとハハカラであった。ハハカラは、家の中から二人の子どもを抱いて出て来た。泣きはらした、真っ赤な目をしている。


「わしも行きます。頭領」

「いや、お前さんは、まだマヤカを看病せねばならんじゃろう? マヤカがいつ死ぬかわからん。それに子どもたちだけになってしまうしの、お前さんは家におらんと」頭領が諭す。

「いや、頭領、マヤカのためにも行きたいのだ。行かせてくれ」


 ハハカラは、子どもを両脇に抱えたまま、頭を深く下げた。


「もし、もし猩々をこの世から消せば、もしかしたらマヤカもすぐに治るかもしれん。その道具、お宝を探さねばならんというのなら、わしはどこまでも探しに行く。わしに行かせてくれ」


 頭領は、何度も頭を下げられ、子どもを受け取ると、うなずいた。

「いいかな、うつしどの。ツヌガアラシトに伝えてくれるかの? 土蜘蛛から4名と共に、旅に出て、猩々を倒す手立てを見つけてきてくれるか? お頼み申す。長い旅になるかもしれん。それから……」

 

 頭領は、パムの手を取った。


「そなたのように子供に頼むことではないのだろうが、ツヌガアラシトどのと話しをするためには、そなたにも一緒に行ってもらわねばならん。お願いいたす」


 頭領は、パムにも頭を深く下げた。パムは頷いた。


 それからパムはソシモリに、頭領の言葉を伝えると、「どうする? ソシモリ?」と聞いた。ソシモリは、村人たちを見ると、家の上にひょいと飛び乗り、剣の柄をもった右手を高く掲げた。

「手下ども、行くぜ! スサノオを退治しに!」

「ソシモリ、だから、退治しに行くのは、猩々だってば!」

「いいんだよオレ様が王だからな」


 パムは一抹の不安を感じながらも、今度は和國の旅に出ることになった。

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