圧倒的な描写で紡がれる、バイオレンスと美しさに満ちた少女の物語

まず最初に驚かされたのが物凄い文章力。
一人称のテンポのいい文体から見せられる情景はハッとするほど綺麗で、主人公の内面も切なさを呼び込んでくる。しかもちょっとした仕草、表情、容姿からそこはかとなく感じられる美しさはエロスも含んでいて、なんというか全部が輝いて見えるのです。

本作の魅力はなんといっても主人公ユリアナのキャラクター。
大人たちの策謀の中でもがくユリアナはとても芯が強く、信頼を裏切られながらも立ち止まることはない。逆境を撥ね退けようとする逞しさが読者をぐいぐいと物語の中に引っ張り込んでくれる。
他にも一癖ありそうなキャラクター達が、それぞれの思惑を持って動いているのでハラハラする展開が待ち受けています。

決して少女小説の枠に因われない大作だと、個人的には太鼓判を押せるつもりです。
是非とも読んでみてください。

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