precious stage

正面から向き合わないといけない

    precious stage


『フレンド限定』記事は、削除されたり、改稿されている様ではなかった。

って事は、なにも飾らない、素の栞里ちゃんのブログって事。

読むのは怖い。

だけど、『正面から向き合う』ってぼくは決めたんだ。

もう逃げない。

ぼくはいちばん最近の記事をクリックした。




     2017-08-21 00:12

         ☆無題


   お兄ちゃんはあたしの家まで送ってくれるって言う。

   絶対終電に間に合わないのに、大丈夫って言ってくれる。

   「世界で一番好きだよ!」って、

   「ずっとずっと、大事にしてあげたい」って、

   言ってくれた!


   嬉しい。


   こんな汚れきったあたしに、そんなこと言ってくれるなんて。

   今日、お兄ちゃんに会えたのは、奇跡。

   願いがかなって、ほんとによかった。

   あたしは新しいステージにあがれる。

   もう、ボッチじゃない。

   



これは、さっき電車のなかで書いてたブログだ。

ぼくの言葉に、栞里ちゃんはこんなに喜んでくれたんだ。

嬉しい。


幸せな気分に浸りながら、ぼくはひとつ前の記事をクリックした。




     2017-08-20 18:38

         ☆無題


   嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!

   嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!

   嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!

   嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!

   嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!!




えっ?!

こっ、これは、、、


そうか。

ぼくに見捨てられたと思って、絶望して服を投げ捨てたあとの記事。


あのときの恐怖が甦ってきて、背筋が凍える。

つづけさまに、ぼくは記事をクリックしていった。

ぼくの知らない栞里ちゃんが、次々と現れる。


ぼくの事を信じられると思って、自分の話を打ち明けようと決心した時の気持ち。

イベント会場での、コスプレの思い出や感想。

二股と思ってた電話の相手がゲームキャラで、気が抜けたり安心したりした事。

会場でぼくに会えて、嬉しさと不安の入り交じった複雑な気持ち。

行こうかどうか迷って、不安な思いで辿り着いたイベント会場。



、、、なんか。

読み進めるに従って、気持ちがドンドン沈んでいく。

そういえば、どうして逆読さかよみなんてしてるんだ、自分?

これじゃ、ビッチになろうとしてた家出娘の栞里ちゃんに、戻ってくだけじゃないか。


そう気づいて、ぼくは一気にページをさかのぼった。

ブログは去年の冬くらいから書きはじめたみたいだったけど、iPhoneのバッテリー残量の事もあり、とりあえず、ふたりが出会った夜の記事から読みはじめた。



   *作者註


<これより先は、ミノルと出会ってからの、佐倉栞里のブログが中心になります。

主人公のミノルは栞里の行動と思考に、正面から向き合います。

ブログには極めて赤裸々で性的な記述が多々あり、栞里に対して嫌悪感を抱く可能性もあります。

そういう内容を好まない方は、ここから次回の最終章へ飛ぶ事をお勧めします>


つづく

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