Flight boy

坂戸樹水

第1話

 切欠は、良く分からない。突然、いきなり、前触れも無くやって来たんだ。

こんな感覚は、言葉じゃ説明できないんだよね。


 そうだな、最初は気持ち悪くて、そいで目が回る。

グッと目を閉じて、暫くの浮遊感……それが段々楽しくなって来た時に目を開ける。

すると、どーでしょ。『ココ何処デスカ?』って状況に陥るんだ。



(だからぁ、ココ何処デスカぁ?)



 見慣れない天井。

視線だけで辺りを見回せば、見慣れない青いカーテン。


(今日は俺、姉チャンちに泊まりに来てたんだよなぁ?

 姉チャンちのカーテンは黄色。電器の傘は……ぶら下がり系の和物じゃね~って)


 目線の先には古典的な和物の電器傘。

思い返してみれば、姉の部屋の傘は円盤型の洋物だ。

これは間違いなく、姉の部屋では無い事を物語っている。


(どうやら又も特異体質を発揮しちまったみてぇだ。頼むよ、誰か起こしてくれ!)


 そう願った寸暇、遠くから呼びかける声が聞こえる。



「―― く……」



(聞こえねぇって! もっとデカイ声で呼んでくれってば!)



さく!」

「!!」


 意識が戻ればパッと目が覚め、勢い良く起き上がる。

そう。朔です。俺が朔です。


(か、帰って来れた!)


 ホッと息をつく。

帰って来られないかと思った……って、あぁ、夢から覚めないんじゃないかって、思った。

鼻には姉チャンが作った手作りの野菜炒めの匂い。あぁ、疲れた腹減った。


「朔、また眠りながら どっかへ行っていたんでしょう?」


 不自然な姉の弟の話ですが、暫しお付き合いください。


「まぁ、うん……ハァ。でも、月子つきこ姉チャンがいてくれたから、安心して寝れた」

「本当に気を付けてよ?

 死んじゃったんじゃなかって、不安になるくらい起きなかったんだから」

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