極彩色で復元された歴史書が、迫真のダイナミズムを伴って鮮やかに躍動する

圧倒的戦力差の守城戦を舞台に、魅力的な登場人物たちが戦場を駆け、その背景には相克するふたつの民族、そして国がある。否応なしに引きつけられてしまうこれらの要素を、熟練した文章が物語に紡いでいるのですから、おもしろくない訳がありません。

そして、魅力に満ちたこの作品が、「襄陽守城録」という実際の戦場の記録がベースになっていることにも、触れないわけには参りません。防衛側の一方的な記録を、これほどまでに豊かな色彩をもって、攻守双方の視点の物語に織りなおしてしまう作者さまの手腕に驚きながら、新しいエピソードを心待ちにしています。

大河沿いの城郭都市で、ふたつの軍勢が、人々の思いが、交錯してぶつかりあい、火花を散らす。一大スペクタクルの世界にどっぷりと浸かってみませんか。

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