6。 新生、玉精霊?

6。 新生、玉精霊?




 ルシルは跪くのをやめて空中に立ち上がった?

 これは立ち上がると言うのだろうか?


「それで話は戻るけど、この玉精霊たちを安全に如何にか出来るの?」


『ええ。 私なら玉精霊を傷付けることなくしぜん様から離せます』


「それなら頼む」


 そこでルシルは少し考えるような仕草をする。


『実は私がやるよりも良い方法がありますので、そちらの方が良いかと』


 え?

 なんか他に方法があるのか?


「どういうこと?」


『簡単な方法です。 しぜん様が魔力を少しだけ玉精霊たちに与えればいいんですよ』


 我の魔力を玉精霊たちに与える?

 どうゆう事だ?


「それで我から離れるの?」


『ええ。 しぜん様ほどの力の有る方の魔力を得られれば玉精霊たちは成長して自分で物事を考えるだけの存在になるでしょうね』


 そんなんで玉精霊成長すんの?

 マジで?


『そうなればしぜん様の命令を聞くと思うので、離れろと玉精霊たちに命令すればいいのです』


「なんか玉精霊に餌を与えるみたいな感じだな」


『まぁそんな感じです』


 ここから玉精霊の育成が始まったりするのだろうか?

 まぁウチにペットは居ないし育ててもいいんだけど。


「まぁ我が玉精霊たちに魔力を与えるのはいいんだが、どうやって魔力を出して与えればいいんだ?」


 そもそも我は魔力の出し方なんて分からないぞ。


『簡単ですよ。 風を操った時のように魔力を出したい所から出そうと思えばいいんです』


 なんか随分と簡単で適当な感じだな。

 それで本当に出来るのか?


『あぁ後ですね。 魔力を出す時にしぜん様が思う玉精霊の姿をイメージして下さい』


「え? なんで?」


『魔力にはある程度想いを込めることが出来るのです。 それでですね、今の玉精霊は不確定な姿をしていますから、受け取った魔力の想いに影響を受けて姿を得ることが出来るんですね』


「へぇー」


 我がイメージした姿になるのかー。

 なんか良いなそれ。

 じゃあ超美少女とか可愛い犬とか猫にもなるんだよな?


『分かったみたいですね。 じゃあ魔力を出してみてください』


「よしっやってみる!」


 とりあえず美少女だな!

 我は美少女をイメージする。

 そのまま全身から魔力をちょっと放出しようと思う。


 美少女……可愛い美少女……来い可愛い美少女!


『あ! 言い忘れてましたが、玉精霊は小さいので大きくはなれないですよ』


 そこでルシルが今、思い出したといった感じでそう言った。


 えっと小さい可愛い美少女……。

 頭の中に手の平サイズの羽の生えたワンピースの少女の姿が思い浮かぶ。

 ……ってそれは精霊じゃなくて妖精だろっ!?


 そこで我は身体にくっ付いた玉精霊たちがモゾモゾと動いているのが目に入った。


 モゾモゾ……数が多い……妖精……可愛い……。

 何だかイメージが変になってきた。


『そろそろですよ』


「いやちょっと待って!?」


 我がそう言った瞬間にポンッと音が鳴る。

 そしてそのまま次々にポンポンポンッと音が鳴り続けて……音が止む。


『はい。 もう魔力は止めていいです』


 何ということでしょう。

 綿のようだった玉精霊たちは一つ残らず変化していました。

 我は身体にくっ付いていた一体の玉精霊を手の平に乗せて顔の前に連れてくる。


『わぁー』


 まじまじと見る。

 舐め回すように見る。


『てれるー』


 すると、その玉精霊は頬を赤く染めてもじもじとし始めた。

 小さな身体に短い手足。

 それに丸い頭。


「ってこれ精霊じゃなくて、どっちかと言うと妖精じゃねえか!?」


 我の声に驚いたのか、手の平に乗っていた玉精霊がベッドの上に転がり落ちる。


「うわっ大丈夫か?」


 転がり落ちた姿に我は慌てて声を掛ける。


『だいじょうぶー』


 どうやら何の怪我もないようだ。

 よかった。


『ふふっ。 そんなことで精霊は怪我をしませんよ』


「そうなのか」


 まぁ精霊だし、怪我なんてしないのか。


『どうやらちゃんと全部の玉精霊が姿を手に入れたようですね』


 我の身体に引っ付いてる奴らを見ると、確かに全部が小人のような姿になっている。

 って、全部妖精みたいな小人姿になっちゃったのかよ!?

 ……まぁいいか。

 可愛いは可愛いしな。


『早速、玉精霊たちに命令をしてみてください。 ちゃんと聞いてくれる筈ですよ』


「えーっと、全員整列!」


 とりあえず玉精霊たちに整列するように言ってみる。


『せいれつー』『ならべならべー』『どいてー』


 玉精霊たちは各々が何かを口に出しながら、ベッドの上を転がったり走り回ったりして、ふよふよと空に浮かんで整列した。

 いや、結局飛んで空に整列するならベッドの上をわざわざ動き回ってたのは何の意味があったんだよ……無駄に可愛いわっ!


「はぁ」


『なんではぁっていってるのー?』『しらなーい』『へんなのー』


 こいつら一応我が精霊王だってこと分かってんのか?

 ルシルは玉精霊たちを見ても何も言わないし。

 不敬だ! とか無いのかなぁ。


「我が誰だか分かる?」


 玉精霊たちはそれぞれ顔を見合わせてから息を合わせる。


『せいれいおうさまー』『まー』


 ちょっと声ズレてるし。

 なんかこいつらの顔を見ていると何も考えていなさそうな感じがする。

 まぁでも我のことが分かるならいいか。

 そういえば、こいつら一体何体居るんだ?

 見たところ、かなりの数が居るんだが。

 数えてみるか。


「点呼!」


『てんこ?』『なにそれ?』『あれかな? すうじをいうやつ』『それだー』


 その後、かなりぐだぐだだけど点呼を終えて玉精霊たちはちょうど50体居ることが分かった。

 最後の方は危うかったな。

 でも、それがまた可愛いんだよなぁ。

 美少女や犬とか猫の姿にするよりもこっちの方が正解だったかも。

 こいつらを見ているとそう思えた。


『せいれつあきた』『つぎのめいれい』『まだー?』


 かなりゆるいから見ていると力が抜けそうになるわ。

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