第5話恋する俺は学校の相談屋 最終章①

彼に悪いことしちゃったな。


私の悩みを押し付けてしまった。


どうすればいいのか


私もたくさん考えた。


恋を諦める道


恋を選ぶ道


どちらも私には辛い選択であった。


何故私は普通になれなかったのかな?


凡人だったなら、こんな悩みは生まれなくて済んだ。


恋を選ぶことができた。


でも私は人よりもちょっとだけ優れてるようだ。


そのぶん周囲からの期待も増えた。


親にも世話になって今ここに私は居るのだ。


答えなくちゃならないよね…


でも恋も捨てたくない…


考えれば考えるほど涙が出てきた。


正しい解なんてあるのかな?


わたしにはわからない。


彼が教えてくれるのだろうか。


それでいいのだろうか。


ダメだ。私の頭じゃこれはわからない。


こんな時に働かないなんて


普段より解くものよりよっぽど大事な問題なのに。


彼は私に〝完璧超人〟と言ってくれた。


それは違う。


結論ひとつ出せずに、人任せにする。


私は…………………………本当に、臆病者だ。















午後四時半、電話があったあの日のように空は紅く光っていた。


俺は椅子に腰掛け彼女を待っていた。


俺が出した答えを言うために。


コンコン


彼女が来たようだ


「どうぞ。」


「失礼します。」


礼儀正しく、西条さんは部室に入ってきた。


ここまでは前回と似たような感じだった。


しかし入ってから彼女はドアの前に立ったままでいる。


「………………………」


「………………………」


お互いに黙ったままであった。


嫌な感じだ。


五感で感じ取るもの全てが気にくわない。


彼女が少し俯いてこちらと目を合わせないこと。


場の空気が冷たいこと。


そして何より、俯いている彼女に涙の跡があること。


全て俺が望まないことだ。


ちょっとでも助けになりたい。


彼女のことをそれほど良く知っているわけではない。


だから彼女の悩みに心から同情することなどできない。…いや、許さない。


彼女はおそらく他の友達にも何回か相談したのであろう。


大半は同情、共感しようとしてきたはずだ。


そうすることで、優しい自分アピールができるから。


そんなもの彼女は欲してない。


彼女が今欲しいものは、友情ゴッコなんかじゃない。


秤にかけた二つのことを真剣に考えているのだ。


だからこそ、彼女はここにきた。


普段関わりの少ない俺の所に。


そうなれば立場は明快だ。


彼女は依頼人


そして、俺の仕事は相談屋。


やるべきことはただ一つ


仕事だ仕事。俺の答えはもう出た。


…………………ほんの少しだけ、一縷の望みも掛けて、な。













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