第2話恋する俺は学校の相談屋②

「あのね…テツシ君……。」


「何?」


「相談ごとってね?恋愛のことなの…」


「…へぇ、それで?」


「…ここまで言って気づかない?はぁ……。」


「え…まさか…え?」


「そうだよ、私はテツシ君のことg————————————




『起きろおぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!』


「うわぁ!?」


なんだ?なんだ!?


「鍵谷…俺の授業で寝るとはいい度胸だな………。」


あれは夢か!くそっ!!


はっとして周りを見るとみんなこっちを見て笑っていた。


夢の中に出てきた西条さんも前の席にちゃんといて笑っていた。


そして目の前には五時間目のみんなから鬼と呼ばれる世界史の担任が立っていた。


これだけ揃えば次にとる行動は一つ。


「ひぇっ……先生すんませんでした……。」


とりあえず謝っておこう。罰は避けたい。


しかしそれで逃してくれるほど甘くない。


教師は無言のまま前の黒板の方へ歩くと、つけていたプロジェクターを指で示し、


「よし、鍵谷。これを30秒以内に答えれたら許してやろう。」


お?やったぜ。反省文じゃない。おまけに俺は世界史は得意だ。


これはワンチャンあるかも————————


と思ってたら、教師が出してきたのは何と18世紀ごろのヨーロッパの地図。


そして問いとは————


「王国の名がつく場所ををペンで囲め。」


は?


いや三十秒じゃ無理でしょう。


しかし俺のそんな思いは伝わらなかったそうだ。


「始め!」


ヤベェ…


どうしよう…


「残り20!」


いかん、急がねば。


ととりあえず王国を思い出さねば——と思い顔を下げると、前の席の西条さんがノートを立てていたのが偶然見えた。


そしてそれには、何とヨーロッパの王国名が現在の国名とともに書かれていたのだ。


早すぎねーか!?


「残り14!」


しかし今はそんなことを考えている場合じゃない!


「くっ…ッ」


俺はそのノートを目に焼き付け、黒板のスライドに行くと全力で

ポルトガル王国、スペイン王国、シチリア王国、フランス王国、ナポリ王国、サルディーニャ王国、ハンガリー王国、大ブリテン王国、ポーランド王国、そしてデンマーク、ノルウェー、スウェーデン王国をペンでなぞったのだった。


「ハァ……ハァ………」


「…………!!27秒!!」


驚いた教師の声とともに、教室中が歓声を上げた。


「すげーーー!!」


「鍵谷君ってそんな世界史できるんだ!?」


「罰から逃れるなんて…かっけーー!」


「いや見直したぞ鍵谷。先生は嬉しいぞ。」


おーいい気分いい気分。……なわけないけどな。


西条さんほんとにすげぇな……。


俺が彼女に感謝のアイコンタクトを送ると、彼女は軽く笑った。



そうこうしているうちに授業は終わり、六時間目の体育に移った。


体育はバスケだった。


男子は人数が多いのでたまに暇ができ、そういう時にはどうしても女子の方を見てしまう。


仕方ないね。男の子だもの。


俺も暇だったので女子の方を見ていると、ちょうど西条さんのグループがやっていた。


確か彼女運動もできるんだよな…?陸上部だったはず…。


と思っていると、西条さんにボールがまわった。


次の瞬間


彼女はハーフラインを少し超えたあたりから、いきなりシュートを放った。


そしてそれは皆が見上げる中綺麗な弧を描き————————

———————————————ゴールに、収まった。


「キャーーー!!!」


「うぉぉぉぉぉ!!?」


当然女子のところでは嬌声が響き、少し遅れる形で男子の方からも驚きの声が上がった。


いやほんとすげえな、バスケ部じゃねぇの?あの人。


あんなのできる人クラスの男子を含めても他にいないって………。


改めて実感した。


彼女はやはり天才なのだ。


何をさせても期待以上。期待を裏切らない人なのだ。


それ故にますます気になってきた。彼女の相談が。


ようやくチャイムがなり、この後終礼が終われば、いよいよ始まる。


……冴えない凡人の活躍時間がな。




































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