第6話 東にある公園


私は昔から同じ夢を見ていた。


それは不定期で、数ヶ月おきに見ることもあれば、数年もの間見ることがない日もあった。


その公園は実際にある公園で

ただっ広い敷地のわりに

砂場と滑り台と土管とブランコしかないような簡素な公園だった。


私は小さい頃はいつもその公園に

遊びに行っていた。


そのせいか大人になってからは

全くその公園には行かなくなったというのに

度々その公園の夢を見る事が多くて。


ただ一つだけ現実と違うのは、

夢の中でその公園に行くと必ず誰かに


『この公園では人が殺されたから、

もう来てはいけない。』


と言われてしまう事。


しかも不思議な事に

その夢は実家にいる時にしか見なかった。


久しぶりにその夢を見た時は

何故かしょっぱなから

『あぁ…これは夢だな』と

すぐに理解する事が出来た。


夢の中のその公園では

ほっかむりをしたおばあさんが

しゃがみ込んで草引きをしていた。


その時は後ろ姿しか見えなかったが、

私がブランコに乗ろうと近づいたら


「ここに来てはいけないと

言われなかったかい?」


と突然声をかけられた。


突然声をかけられた事に驚いた私は

思わずビクンと大きく体が震えた。


高鳴りはじめる自分の心臓の音とこだまするかの様におばあさんがスコップで土を掘り起こす規則的な音だけが、その公園の中に響き渡っていた。


「…え?なんで?

なんで遊びに来ちゃいけないの…?」


そう尋ねた私に向かって

おばあさんは振り向きながら

こう答えた。


「ここでは人が殺されたからだよ。」


そう言ったおばあさんの瞳は

完全なる白目だった。


そんな夢を見たもんだから

翌朝目覚めた時のテンションは最悪で。


ぼ~っとした頭のまま

食卓についたら、

「どしたの?なんか元気ないじゃん」

と母親から声を掛けられた。


「いや~…なんかよく東にある

あの公園の夢を見るんだよね~

なんか夢の中でいつも、

『ここは人が殺されたから来るな』

とか言われてさァ~」


そう言った瞬間に笑顔だったはずの母親は

急に真顔となって、そしてこう言った。


「…なんであんたがその話を知ってるの?

あの時あんたはまだ生まれてなかったでしょうがね。」


…と。


どうやら母親が言うには数十年前に

あの公園…厳密にはあの公園の近くで

お母さんの友達が、酔ったいざこざに巻き込まれ刺し殺されてしまったらしい。


それは私が生まれる随分前の話で

もちろん私が知るハズもない事件だった。


私は昔から同じ夢ばかりみていた。


…だが、その真相を聞いたいま、

その夢は全く見てはいない。

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