即興小説劇場

豆腐数

第1話 暗殺寿司

 潔癖な暗殺者は寿司を好む。自身の身を綺麗にし、手を食器用洗剤で洗って寿司を作る。

 そうして作られた寿司は暗殺に使われるのだ。

 とろけるサーモンの脂が政治家の喉に詰まり窒息死へと導き、部下の恨みを買った上司が凍ったマグロの刺身で全身を切り刻まれ米まみれになって死ぬ。


 今日もまた暗殺者は夜を駆ける。カラーンコロンと、ゲゲゲの歌や小泉八雲のごとき下駄の音を響かせ、星もない夜空の下、ターゲットの足元に寿司を投げる。ターゲットは寿司で足を滑らせ、頭をコンクリートにぶつけて死んだ。慌てふためく取り巻きの部下たちが死体を囲み救急車を呼べと騒ぐ中、暗殺者は呟いた。


「玉子も立派な寿司のうちさ」


 救急車のサイレンが、潰れた玉子寿司を赤く照らしていた。




 お題:潔白な暗殺者 必須要素:寿司 制限時間:15分

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