第十五話

 あなたはぜんとしていた。

 あまりにも絶望的なる状況でもである。

 ひつきよう四十四世紀しゆつこつとしてろーていこくは『しんせいなる世界最終戦争』を宣言し埃及えじぷとをはじめ合衆国中東諸国西中華人民共和国と戦線をえんさせてゆきいん朝鮮連邦までをもろーていこくの領土とするに到達した。世界各国がろーていこくそうめつされめんとなった日本独裁政権はすい第二次世界大戦で誇示した徹底的なる防衛戦線を展開し北方領土と沖縄という南北からのろーていこく陸軍師団による総攻撃をようそく阻止していた。最後の敵国日本の陥落にかんなんしんをおぼえたろーていこくは最終大量破壊兵器『ツァラトゥストラ』の投入を宣言し一週間以内に降伏をひようぼうしなければ日本国土を消滅させると威嚇し国土の消滅を危惧した日本独裁政府がてんてんはんそくとして無条件降伏するかたちで『しんせいなる世界最終戦争』はしゆうえんをむかえたのであった。

 あなたはめんにおちいった。

 そもそも『しんせいなる世界最終戦争』はろーていこく水陸空軍とばんこくの世界各国防衛力との総力戦やたる科学技術をふくそうした覇権国同士の大量破壊兵器による戦争抑止力の崩壊――素粒子レベルで国土を消滅させるろーていこく側の新型大量破壊兵器の濫用――からなる世界規模の軍事衝突という側面のみならず『反ナチス』『反ろー人』せんめつという二十世紀のだや人大虐殺をほうふつとさせる非人道的なる侵略戦争という側面もせんめいとされていた。『しんせいなる世界最終戦争』の第一の犠牲者となった埃及えじぷとでは国家機関の極秘技術がさんだつされたうえにこんとんたるがいでは陸軍師団による略奪ごうかんりんかんさつりくまんし少年兵から軍事幹部までもがれいみんほしいままにしたのである。この残虐無道なる愚行は無論新型大量破壊兵器『ゼウス』の投入によって降伏した超大国合衆国でも継続されさらに中東諸国西中華人民共和国といった反ろーていこく各国のれいみんもまた埃及えじぷとれいみんとおなじく悪逆のかぎりをつくされかいれいなる女性は奴隷としてぎようなる男性は強制労働力としてじんけんじゆうりんの最果てにろーていこく第二の首都とされるいつ領内に拉致され素粒子の対衝突によるにくたい消滅という極刑に処せられていった。無論『しんせいなる世界最終戦争』の犠牲者となったのはれいみんのみならず各国首脳をはじめ世界各国の軍人や政治的主導者たちも一審制の国際裁判によって死刑を宣告されつぎつぎにいつ領内の強制収容所に搬送されれいみんたちとおなじくにくたい消滅の極刑によってえいしてゆくこととなった。国粋主義的な国家のなかにははや世界はしゆうえんをむかえるだろうとして国民総自決を臨時法制化し首相をはじめ一国総人民が自殺するという暴挙におよぶ事例まで報告された。

 ろーていこくの勢力は天下無双であった。

 ろーていこくはんぎやくした国家のなかでも徹頭徹尾防衛を完遂せんとした日本も新型大量破壊兵器の投入を宣言されべんしながら降伏したのち国内ではろーていこく軍人によるじんけんじゆうりんまんばんこくれいみんが犠牲となりさらには――敗戦国としては当然のことであったが――日本独裁政権および連立政権の首脳と最後まで国家防衛にしんしようたんした軍人たちも――余談だが二十世紀日本国憲法の発布によって発足した自衛隊は民自党と主民党との巨大連立政権の樹立および憲法改変によって雲散霧消し日本国水陸空軍が設置されていた――国際裁判の被告人となり与党員全員と軍人のおよそ八十%が極刑およそ十%が終身刑およそ五%が有期禁固刑を宣告されのこりのおよそ五%が天皇陛下への忠誠をひようぼうして自決するにいたった。

 無論あなたも極刑を宣告された。

 はや刻一刻と破滅の刹那が肉薄していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る