青春の喪失

青春には限りがある。

移動中の電車でそう考える。

私は15を過ぎた時にそう思った。そもそも私の人生に春は存在していたのだろうか。勉学において可も不可もあったわけではなかった。身体的能力も特に褒められた記憶がない。色恋沙汰にも疎かった訳ではないが、どれかが特別記憶には残っていない。平凡

平坦

大衆

私に似合った言葉だ。先ほどの言葉を訂正しよう。私に青春は来なかった。それが正解だ。ふと思い立ったとき、扉が開き、外から杖を持った老人が入ってきた。そんなことより先に扉の外から吹く風に不快感を覚え、早く扉が閉まることを願った。しかしながら、その老人は奇しくも私の目の前に立ち続けていた。居た堪れなくなり、席を譲ろうとした。

「席、どうぞ」

「いやいいんですよ」

「一度譲ってしまったんです。受け取ってください」

「そうですか」

老人は座った。よくわからない罪悪感に打ち勝ったような気分であったが、同時に自分の状況を再確認し、自虐的に笑った。

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