第5話

 男子とは、あぁ、ラブコメみたいなこと起こらないかなぁ。と、人生で一度は思うものだ。

でも、実際そんなことあるわけないし、あったとしても、ただめんどくさいだけだ。


「お兄ちゃん、なんで喜城さんに馬乗りされてるの?それから、今とんでも発言が聞こえた気がするけど」


「あら神谷さん。これは馬乗りではなく、騎○位というのよ?」

「...」

「喜城だけに」

「それ言ったら○の意味がないだろが!」

「まぁ、体勢のことは置いといて、喜城さん、あなた今おにい...兄に何て言ったの?」

「何度でも言います。わたくしとこの方は結婚を誓っているのですわ。でもまぁ、あなたがこの方のsisterだったとは驚きですわ。不思議な縁のあるものね」


「おい凪、この状況なんとかしてくれよ!」

「好きになってくれる人がいてよかったね」

「兄を見捨てるな‼」

「おぅ、俺からも祝福してやる」

「友達を見捨てるな‼」


「いやだって、人生に置いて異性に好かれたことの無いお兄ちゃんと、結婚したいって言ってくれる人が現れたんだよ?よかったじゃん」

「俺もだ。こいつが昔から追っかけ回してた男が、まさかお前だったとは驚きだが、親友と妹のことだ。これを祝福しないわけにはいかないだろう」


「おいお前ら!いかにもなことを言っているがな、そもそもだ。こいつと結婚の約束した男が、まだ俺だとは決まってないだろ」

少なくとも、俺の中にそんな記憶はない。絶対人違いかなんかに決まっている。


「いいえ、あなたで間違いありません!」

「だからなんでそう言い切れるんだよ!」

「わたくしの勘に間違いはありません!」

「勘かよ‼」

「いいでしょう、思い出してもらうためにも、わたくし達の馴れ初めからじっくり話してあげます」

「ねぇ、ここ学校だしさ、場所移さない?」


気付いたら、俺達のやり取りは周りの人間の注目を浴びていた。

「そうだな。仁、お前らの家でいいか?」

「なんでだよ」

「だって、話す場所なんて、どっちかの家しかないだろ?うちは狭いからさ」

「わたしは別にいいけど」

「わたくしも、話のついでに仁さんの性癖調査もしたいですし」

「お前人の家でなにする気だよ」

「じゃ、とりあえず解散!」


 俺達は別れ、それぞれの帰路についた。といっても、二組しかないが。帰り道を歩きながら(通学は徒歩だ。健康のためではなく、短い距離のために自転車買うくらいだったら、魔法少女グッズ買いたいという俺の意見)凪がふと話しかけてきた。

「お兄ちゃん、喜城さんのこと本当に覚えてないの?」

「まったく」

「酷い、最低」

「酷くて最低なのは俺に対するお前の評価だ」


この妹、気を抜くとすぐにけなしてくる。これでツンデレとかならまだいいが、こいつからはデレ要素が感じられない。

「でも向こうは凄く辛いと思うよ?結婚してくれるって言ってくれた人に再会できたら、自分のこと忘れてるなんて」

「だからこそ人違いであって欲しいんだよ、女惚れさせて待たせるなんて、俺みたいな奴がやっていいことじゃない。そんなキザなことができるのは、飛びっきりのイケメン野郎じゃないと駄目なんだ。あいつにはイケメンの方がお似合いだ。」

「...」

「ま、そもそも、俺にあんなキャラ強い美少女を引き取る度胸なんか無いしな」

今回は結構いいことを言えた気がする。

「お兄ちゃん」

「ん?」

お兄ちゃんを褒めてくれるのかな?カッコいいって思ってくれるのかな?

「ヘタレが」

お兄ちゃん、泣いていいかな。

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