　この世界は人間世界のお隣にある世界。その間を自由に行き来できる獏を介して人間界との微妙なバランスを保ちながら存在する世界。獏は人の夢を飲み込み持ち帰る。人は忘れることで精神を保ち、忘れることで無謀を夢見る。夢は欲望となり、勇気となり、人の世の発展へと繋がる。獏は悪夢を食べる。悪夢の絵だけを食べると、感情を吐き出す。その感情を調理し、食べるのがこの世界の住人。

獏と呼ばれる方々はここの住民の頂点に立つ神のような存在である。この世界の住人には肉体がない。しかしながらそれでは色々不便なので各々好きな姿に化けている。肉体が無いので老いることも、死ぬこともない。ある時期が来ると獏の仲間入りをし、その務めを終えるとまた別の世界に行くらしい。まだ若い魂が、ふらりと何処かからやって来ると見つけた者が親のように面倒を見ている。同じように人間の面倒も見ている。世話好きで穏やかな者たちの世界なのである。