和歌で思いを伝え合う、平安貴族たちのラブレター

紀貫之の末裔である紀乃は、名門・久の宮家復興のため、乳姉妹である藤の宮を玉の輿に乗せようと奮闘する。そんな中、自らも宮中女性たちの憧れである殿方から思いを伝えられることとなり……。

平安後期と思われる時代の都を舞台に貴族たちの恋と様々な思惑が絡み合う、純和風ラブストーリーです。

淀みなく流れる雅やかな地の文、一方で会話文は現代風に振り切っていてコミカル。そのバランスが絶妙で、読んでいて楽しいです。また、キャラクターが魅力的。藤の宮にはあれこれ指導するものの、自分も恋愛に関しては経験がない耳年増で、殿方からの求愛に戸惑うばかり……そんな紀乃をどんどん好きになっていきます。

この時代の貴族らしく、思いのやりとりは和歌で行われるんですが、それがまた上手いです。五七五七七に秘められた恋心。その中で季節が巡り、花が咲き、都の空に月が照る。特に緊張感漂うクライマックスは見事。

新春に読むのにぴったりな作品、今のうちにぜひ!

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