第5話 王都・表


魔法陣をくぐった後、俺たちは薄暗い路地に出た。


「無事に出れたみたいだな。にしてもここはいつきても薄暗いな」

「場所が場所、我慢して」


確かに薄暗くて気味が悪い。よく見ると建物と建物の間に巨大な蜘蛛の巣が出来ている。それ程人の手が加わってないって事か。

これなら魔法を使っても誰にもバレないな。


「それで、今から、なに、するの?」

「うーん、どうしよっか。いきなりあれを見せるのはショッキングだから、観光しよっか」


「「は?」」


俺とコトネの息があった。

俺はこの地について何も知らないくせにいきなり観光とかできるわけがないと思っている。

コトネはここに何回も来ているようなんでなんて考えているかわからない。


「観光、するなら、するって言って、くれれば、お金、持って来たのに」


観光する気満々ですね。

でも、この地にも慣れるためのもこういう機会は必要だと思う。観光するお金は全部払ってくれるだろうし。


「観光って言ってもどこに行くんだ?」


急に観光するって言っても絶対プランがたってない。

どうせそこら辺を回ることになるんだろうな。


「ま、ここで話すものあれだし、どっかの店に行くか」


俺たちは路地から出て38歳について行った 。



しばらく歩いて着いたのは、よくあるファミレス見たいなお店だった。

例えるとしたらガ○トだ。そこそこ人もいるようだ。


「この王都ではそこそこ人気の店なんだ。安くて美味しくてメニューが豊富だし」

「ここの、雑炊、大好き。この、店で、一番。異論は、ない」

「は? ここの一番はチーズアウトステーキだろ。頭沸いてんのか?」

「そっちこそ」


はい、始まりました。さっきの続き。喧嘩の内容は違えどもくだらない内容には変わりはない。

そんな二人は置いといて俺はお店の外に貼ってある目表を見た。

メニューを見てあることに気づいた。メニュー表に書いてある文字が全て日本語だった。日本語以外に英語が書かれていた。

えーと、何があるんだ?

きのこ雑炊、ランダム雑炊、肉雑炊、チーズアウトステーキ、生姜焼きステーキ、などなど。

どれも美味そうだな。

早く食べたいのにあの二人は……


「いい加減に認めたらどうだ? チーズアウトステーキはこの店トップ店に入るんだ! そこらへんの雑炊とは格が違うんだよ! 格が!」

「確かに、チーズなんとかステーなんとかは、美味しい。でも、ここの雑炊は、世界で、一番美味しい。そんなことも、わからない、あなたの、舌は、お子様」

「ほぉう、やるか?」

「ここで、やったら、あなた、立派な、犯罪者。あそこに、ぶち込まれたいの? それに、待ってるよ」


コトネが俺の方を指差した。

そして、38歳の人は、うっ、と言った。これは絶対忘れていたパターンだと思う。


「しょうがない、続きはまた今度だ。それより早く店に入ろう。席がとられて時間を取られるのはやだからな」

「時間がとられるのが嫌って言ってるけど今の喧嘩でそこそこ時間が取られてるぞ」

「うっ! そ、そんなことは置いといてさっさと行くぞ!」


本当のことを言われ後がない38歳は急ぎ足でお店に入った。


「あの38歳っていつもあんな感じなのか」

「まあね。あと、これから、38歳って、言うのは、やめたほうが、いい。命、なくなるよ」

「マジかよ。で、あいつの名前は?」

「名前は、アート」


なるほどね。確かアートは英語で術って意味だった気がする。ま、いっかそんなもの。

そんな会話をしながらコトネと俺はアートに続いて店に入った。


「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか?」

「3名で」

「3名様ですね! 席にご案内します!」


超元気がいい店員さんに席を案内され、椅子に座った。


「さて、何食おうかな?」

「雑炊、一択」

「チーズアウトステーキ一択だな」


俺が何を頼もうかなと考えた時、こいつらは仲良く雑炊、ステーキ一択って言った。

それ程美味しいものなのか?

メニューを見るとラーメンなどの麺類、ピザ、デザートがある。普通のファミレスと全く同じメニューだ。


「じゃあ、塩ラーメンで」

「「え?」」

「え?」


塩ラーメンを言った瞬間コトネとアートに「え?」と言われた。

何かおかしいことを言ってしまったのか?いや、ラーメンだぞ。ラーメンでここまで驚くのはないだろう。


「喉に、詰まらすよ」

「詰まんねぇよ」


ラーメンを喉に詰まらすのは流石に無いと思う。だってまだ俺10代だし。


「なんだよ、ラーメンってそんなに危ないのか?」

「危ないって、当たり前だよな。お前みたいな年頃の奴が食べたら喉を詰まらす」


んな訳あるか。

頭をかきながら二人に日本のことを教えた。



「ラーメンを食えるなんて……」


驚いているアートを置いといて注文することに。机に置いてあるボタンを押した。するとボタンから魔法陣が出てきて「ご注文はなんですか?」と聞かれた。

俺たちはそれぞれ食べたいものを言った。「かしこまりました」と言った後魔法陣は消えた。


「さて、時間もあることだし話でもするか」


アートの声のトーンと顔の表情を見て真面目な話をする事が分かった。


「あ、そういやお前の名前はなんだ? 名前がわからないと呼びにくい」

「名前か? 境(さかい)、境 結斗(さかい ゆうと)」

「結斗な。じゃあここで結斗に質問。この王都をどう思った?」


この王都をどう思ったか。別にとても賑わっていて楽しそうな街だった。治安も悪くないし、お店の人もとても明るい。悪いところは一つもない。


「特に悪いところがなく、いい街だと思うが」


そう答えるとアートは目を瞑った。


「やっぱりそう思うよな。裏を知らない奴は表で全て判断する」

「と、言いますと?」


アートは小声で誰にも聞かれないようにこう囁いた。


「裏を知れば正しい判断ができる。そして、この街がどれほど腐ってるか分かるはずだ」

「腐ってる? どう言う意味だ」

「ここで説明したいんだが他の上位民衆に聞かれたら色々面倒だ。食事が終わったら話す」



裏を知れば正しい判断ができる。

裏とは一体なんのことことだろう。それと上位民衆も。

この国はどこも活気が良く、人もいいので悪いとこはない。

でも、上位民衆という言葉が気になる。上位がいるってことは下位民衆もいるってことになるのか?

まだまだこの国について何も知らないということか。


「お、きたきた。冷めないうちに食べようぜ」


店員さんが俺たちが注文した商品を一度に全部持ってきた。

そのまま食事に移った。




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