地球の気候も太陽フレアも操れる魔王だけど日本で首相やってます
キューマン
前提:転移、学習、行動
「ここは…?」
私は周りを見回す。
おかしい。
今さっきまで私はいつもの城にいたはずだ。
私ははっきり言って最強なので、特に城から出ずとも周りから攻められず平和に暮らしていた。
それがどうしてこうなった。
私は今、空から強い光が降りてくるとてつもなく暑い場所にいる。
周りを歩いているのは私と同じ形をした生物。
ただ力はなさそうなので、多分下界の民と同じようなものだろう。
その生物たちは、私と同じような服を着ている。
…もしかして、違う世界に来たのかもしれない。
「どうすればいいのだ…」
私は思案していると、歩いていた生物のうち一体が私にぶつかってきた。
「あ痛っ!」
私が思わず声を上げると、その生物は、
「あ、すんません」
とだけ言って立ち去っていった。
ふむ、どうやら言葉は通じるようだ。それとも私の能力だろうか。
「あ痛ぁ!」
またもやぶつかられ、私の堪忍袋の緒は切れた。
「失礼ではないか!他人にぶつかるなど、わざとか!?」
「はぁ?貴方が道の真中にぼけーっと立っているからでしょうが。というか邪魔なんではやくどいてください、通勤してる人たちの邪魔です」
生物はそう言い、さっさと立ち去っていった。
謝罪の一つももらえると思っていた私は、流石に度肝を抜かれて立ち尽くしていた。
「ぐぬ……っ、おのれ…不敬なぁ…っ」
私はすぐにでも周りの生物たちを一掃してしまいたい気分だったが、最強の私がそんなことで殺しをしてしまっては城の部下達からも顰蹙を買うであろう。
ともあれ、この暑さをなんとかしなければ私は生きてはおられまい。
おそらく元凶は浮かんでいる光の玉であろう。
その光の玉を掴んで握り潰してしまえば終わりだ。
だが、予想に反して光の玉は私に握られることはなかった。
「スターダストシェイクハンド?」
「しっ」
なにやら私にも聞こえてきたが、意味がわからないので無視する。
私は少し移動してみて理解した。
移動したところで見える光の玉の位置が変わることはない。
つまり、遠いのだ。
「…仕方がないか」
私は光の玉を葬り去ることを諦め、どこか光を遮る場所に行こうと考えた。
「…国立国会図書館?」
私は能力で文字を読むことができた。しかしこの城のようなものがなんであるかは知らない…尤も、名称は「国立国会図書館」なのだろうが。
それが何を表すかは知らない。
「国」、「国会」、「図書館」がなんであるかを私は知らない。
しかしながら、これは光を遮っている。
私は「国立国会図書館」の中に入った。
「…本か」
一面本だらけだ。
もしかして、本を置いておくこの城のようなものが「国立国会図書館」なのかもしれない。
適当に本を一冊取ってみる。
「…おお…」
能力で語を読み、理解しながらその本を読む。
これは、単語の意味が説明されている本。
それがあれば、「図書館」だとか「国」だとかみたいな難しい単語もわかるかもしれない。
私はその本…「辞書」と共に様々な本を読み、この世界に適応する努力をした。
あまりに集中したため、「閉館時間」というものの存在も知ってしまった。
私は毎日この図書館に通い続けたため、この日本国における常識などを知るのは簡単だった。
なにせ私のいた世界では私は全界(天界・民界・地界)統一テストで二位に大きな差をつけて一位になったのだから、これくらいはできて当然である。
やがて私は戸籍や経歴を偽造して、如何にも普通の日本人「亞倍心蔵」として振舞うことにしたのである。
下民…いや、一般人に紛れ込み生活をしていた私だったが、一つの世界を統べる王として振舞えないのは非常に窮屈である。
もっと城にいた頃のような生活がしたい。
だが、日本は王国ではない。いや、私の世界には「国」という概念が存在しなかったから、言うなれば一人を王として定め崇めるシステムが存在していない。
天皇という存在はいるようだが。
…ならばそのシステムを作ってしまおうか。
この日本には「日本国憲法」なるものが存在している。
あらゆる守るべきルールの上に存在するものだが、王になるには存在がめんどくさい。
どうすればこの憲法というものを消し去り、理想の王国にすることができるだろうか。
私は思索し、思いついたのはこの国の首相になるということである。
天皇はこの国の象徴として扱われているが、政治に係る権利はない。
それでは国民皆が天皇に遠慮みたいなものをして帝国になってしまうからであろう。
なんとめんどくさい国民性であろうか。
それはともかく、なんとかしてこの国の頂点に立たなければいけない。
そしていずれはこの世界の王となり、また以前のような生活をする。
それが当面の目標だ。
私は設定上年齢が27歳なので、何をやるにもまだ間に合うだろう。
見れば、衆議院選挙が迫っている。
私は曲がりなりにも周りの人間と良い関係を築いていたので、応援者は集まった。
能力で供託金はなんとでもできる。
ならば後は必要な手続きを済ませるだけだ。
そうして私は人当たりの良さそうな公約を作り、無所属で立候補した。
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