しろたしろみ (童話、作者:六月菜摘)


しろくまちゃーん。


なぁに、しろくまくーん。


今日もかわいいねー。


うふ、ありがと。そうゆうあなたはカッコ……。(もごもご)

ああ、かごにおやつをもってきたわよ。


おいしそうだな、小魚チップス。

ところで、この長くてぷるんぷるんしてるのは?


ギョニソっていう、人間のおやつらしいわよ。

ああ、いや、それは靴下だったかしら。


それはね、ニーソ。かわいい女の子がひざまでの……。


ああ……。(めんどくさそうに)その情報はいいやー。

つかみはオッケー。



ところで、しろくまちゃん。

ぼくらはこの手でお魚つかむでしょー。

人間ってやつらは、「つり」ってもんをするらしいよ。


ツリー? クリスマスのきらきらの?


えっと、それはちゃうかな。

しろちゃん、どこでそういうことば、仕入れてくるの?


絵本の中にはたくさんの世界があるのよ。

しろくま図書館で、こんど一緒に読みましょう。

しろくんも、もうちょっと世間を知った方がいいわ。


ほぉーい。崖っぷちに建ってる、あの三角屋根のことだね。


行くまでにちょっと命がけなのが、困りものよね。

この前しろすけが溺れて、大騒ぎになったの。



それで、つりのことだけど。


あ、それ、わかったわ。

人間はお買い物すると、かならず「おつり」をもらうんですって。

金や銀や銅の色した、まぁるいの。すてきよね。


それ、うちの父ちゃんが首から下げてるやつかなぁ。


あれはメダル。しろくま選手権の優勝のでしょ。もっと小さいの。

しかもね、「つりはいらねぇ」って言うのがカッコイイんだって。

やせがまんする生き物よねー、人間って。


なんだか、だんだんお魚と関係なくなっちゃった。


どっかで聞いたセリフね。



人間はお魚をどうやって捕まえるのかな。


あ、そういえば、前にきた人間たちはね、

氷にまぁるい穴をあけて、そこの前で何時間も座っていたの。

「わかさぎつり」とか、言ってたわね。


それだ、きっとそれだよ。長い糸をたらして待ってると

お魚がぱくって、気まぐれに食いつくらしいよ。


その秘密の糸がほしいわね。魔法かしら。


手に入れたら、いっぱいしろちゃんにプレゼントするね。


私はやっぱり、「わかさぎツリー」がいいわ。

木にいっぱい、わかさぎが吊り下げられてるなんて、ハッピーだもの。


しろたでーす。


しろみでーす。


2匹合わせて、しろくましろくまでーす。


そこは、「しろたしろみ」でしょー。


(今日もあの二匹、氷上の漫才やってくれましたね。)


(やっぱり「釣り」の時には、あの芸に限るね。お、引いてるぞ。)


<Fin>

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