第11話 お姫様とお買い物その2

 みんなでティリアの洋服などを買い物に行く事になった俺たちは車の中でティリアにラピス王国がどんな国なのかを話していた。



「ティリアさんはお姫様なのよね? ティリアさんの生まれ育ったラピス王国はどんな所なの?」


「あー! それ千夏も聞きたい!」


 ティリアは"うーん"と人差し指額に当て少し考えてからラピス王国のことを話してくれた。


「私が異世界から来た事はお話しをしたと思うのですが、私が生まれ育ったラピス王国は異世界の東に位置する結構栄えた国です。」


「ラピス王国には約1億人くらいの人々が生活しています。」


「日本と違うのはヒューマノイド以外の種であるエルフィリアやオーキーなどが共存して暮らしている点です。」


「そして、電気や燃料ではなく"魔法"を使って人々は火を起こしたり、水を浄化したり、ライフラインを維持しています。」


「異世界にも化石燃料などはありますが魔法の方が空気を汚さないですし、何より効率が良いのです。」


「異世界に住むほとんどの種は得意、不得意はあれど基本的に皆魔法が使えます。」


「私も魔法を使えるんですよ♪」


 そうなのか、ティリアの話を聞くと異世界って、俺がよく読むファンタジー小説に出てくる世界とさほど変わらないのかな?

 楽しそうな世界だな日本からラピス王国に旅行に行く事とかできないのかな?

 海外旅行よりも異世界旅行の方が俺はそそられるなぁ〜。


 ...ん? 異世界にいるほとんどの方が魔法を使える?


「ティリアは魔法を使えるんだよね?」


「はい! 自慢じゃないですけど私は魔法で水の塊を放つ事だってできるんですよ!」


 エッヘンとティリアは自慢げに右手の人差し指をクルクル回して見せた。


「えぇー! ティリアたん凄い! 千夏も魔法使ってみたいんだけど。」


「千夏、そうじゃないだろ? まずは自分の目で見て見たくないか?」


「私の綺麗なこの瞳で何を見ようというのか我が兄よ?」


「そんな事聞くのは野暮だぜ我が妹よ...決まっているだろう...魔法だよ、マ・ホ・ウ!」


「ティリアのご自慢の魔法をぜひ見せてくれ!」


「千夏も兄に同意しますゾ!」


 俺と千夏が魔法をティリアにリクエストするとティリアは大変困った顔をしていた。

 そして小さな声でポツリと一言。


「...ゴメンナサイ。」


「ん? 今なんて言った?」


「私から魔法の話をお話しして大変申し上げにくいのですが...。」


「日本では空気中の魔力濃度が低くて魔法は使えません...。」


 ナンテコッタ! 日本では魔法が使えないのか...。

 なぜ日本が電気と燃料で文明を発達させてきたのか...。

 そもそもの人類の根本を理解してれば...そりゃそうだ歴史上で魔法を使った偉人が存在していないからな。


「ごめんなさい...落胆させてしまって...。」


 ティリアは分かりやすい女の子だ、落ち込んでいるのが一目見ればすぐに分かっちゃうよ。


「いや勝手に期待した俺たちが悪いよ。」


「ティリアが落ち込む事ないだろ?」


「...でも。」


 ティリアともっと関係性を深めたいと思った俺はティリアと一つ約束をする事にした。

 俺はティリアの事をもっとよく知りたい。

 そしてティリアに日本の事を知ってもらいたい。

 ティリアが俺や千夏、母さんや父さんに気を使わなくていいように。

 ティリアにとって、日本での思い出が楽しいものであって欲しいから...。


「ティリア、俺とゆびきりしよう。」


「ゆびきり?」


「お互いの小指を結んで約束するんだ。」


「こうですか?」


 ティリアの指は細くて長い。女の子の指って何でこんなにも美しいのだろうか?

 ティリアの小指に自分の小指を絡める。


「日本の伝統的なおまじないなんだよ、これ。」


「少しくすぐったいです。」


「ところで何を約束するんですか?」


「敬語禁止。」


「...え?」


「ティリアともっと仲良くなりたいんだよ。」


「涼祐...。」


 すると千夏が俺の頬をつねり、ジト目で俺を見つめる。

 そんなに見つめるなよ我が妹よ、兄ちゃん照れちゃうだろ?


「何を二人の世界に浸っちゃってんの?」


「スマン。」


「ごめんなさい!」


 ティリアはすぐに謝る。



 すると会話を聞いてた母さんがニヤっとして


「早速、約束破ったな?」


 と一言。


 俺は思わず、フフッと笑いがもれてしまった。


「ごめんなさい。」


「またまた破ったなぁ〜」


「「...あはははははははは。」」


 可笑しくなって俺もティリアも千夏も母さんも笑いが止まらなくなった。

 暫くみんなでゲラゲラ笑ってた。

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