第18話

「!!!」

 心臓が一瞬痛かったような、停まったような気がした。

 瞳をいっぱいまで開いて、声を出す事もできない。それでいて、彼から目を離す事もできないのだ。

 今、見て__。

「ああ、悪い。それ、洗うやつ。貸して」

 北澤は僕に向かって片手を差し出す。

「あ、ああ」

Tシャツを放る。

「それと、その下、いや違う。そう、そのタオルも洗っちゃうから、貸して」

 僕は無言でタオルを拾い、渡した。


 見て__いなかったのか?

「シャワーいいよ。使えよ」

「あ、うん」

 シャワーを浴びている間も、先程の事が頭から離れなかった。

 風呂から出ると、北澤はお気に入りのTV番組を見ていて、普段と全く変わりはなく、よくしゃべり、よく笑った。

 勧められたビールを飲み、僕も気まずさが消えかかってきた頃、礼を言って家に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る