第5話

「眠い!」

ドアを開けた北澤は、本当に眠そうだった。

「眠いなー、もう。お前よく休日に早起きできるな。ほら、入れ入れ」

パジャマ姿、ぼさぼさ頭の北澤は、のろのろと部屋へ歩いて行く。僕も後に続く。

彼はベッドに着くと、そのまま倒れこんだ。

「寝る。適当にやっといて」

そう言われても。僕は尋ねる。

「朝飯・・・ない? 食べてなくて」

北澤が顔を少しだけこちらに向ける。

「えー? 家にいるのに。食べてこいよ」

「食べるものなくってさ」

 さすがに親と喧嘩して、とはこの歳では言えない。

「貧乏だねえ。・・・戸棚にパンあるよ」

僕は小さなキッチンへ行き、扉を開ける。

「悪いな。・・・、あ、くるみパンがある」

「それはだめ。食パンあるだろ」

「ああ。これね」

食パンの袋を開け、一枚取り出す。

北澤がふとんの間から右手をにゅっと出し、僕の後ろにある冷蔵庫を指し示した。

「マーガリンはそこ。コーヒーもあげよう」

「悪いな」

「親切だから。クーラーつけといて」

 僕は食パンをトースターに入れ、冷蔵庫からアイスコーヒーのペットボトルとマーガリンを取り出し、エアコンのスイッチを入れた。

コップに入れたコーヒーに少しだけ牛乳を入れ、一気に飲み干す。

ふと、北澤も飲むだろうかと思った。

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