第2話 ムカつくこと、この上ない

 痛みがくる。

 

 「っ! ……たぁー」

 見ると、龍三先生が、捻って痛い右足首を押したり触ったりしてる。


 「先生、何してるんですかっ」


 すると、先生の一言。

 「ふむ… 練習はできそうもないな。今回の試験はパスするか・・・」


 はぁ?!


 「冗談じゃないですよ。今回を逃したら、いつするんですか!

 その為に、頑張って練習してきてるのに・・・」


 貴様のせいでー!

 と、掴みかかろうとするとソイツは逃げようとする。


 逃げるな!


 チッ・・・


 逃げ足の早いソイツは一先ず置いといて、先生に向く。

 「龍三先生。私は絶対にパスなんてしませんからね。

 今回の試験に賭けてるんですから。

 それに、アイツのせいでパスなんて、絶対にしたくない!」

と、アイツを指差し吠える私に対し、先生はアイツに聞く。

 「そうなのですか?」


 ソイツは

 「道が分からなくて、何かに当たったのは分かったのだけどね。

 急いでたもので・・・」と、そこまで言って私の方に寄って来た。

 上等じゃないか、思いっきり毒づいてやる。


 すると、ソイツは

 「私は、福山博人。今朝、ドイツから戻ってきたばかりなんだ。 

 マンションから車でここに来るのに、久々の日本だったせいで・・・、道が分からなくてウロウロしてたら、あの道に入ってしまった。でも、コンビニに駐車スペースが見えたので、そこまで行こうとしてたんだ。まさか、誰かを当てるだなんて思いもしなかったよ。悪かった」

と、言ってきた。


 そこまで一気に言ったソイツ、福山博人は手を出してきた。

 黙って睨んでいたかったが、言いたかったので言わせてもらう。


 「…福山友明。来月初めに、合気道の段試験を控えてる。

一言いわせてもらうが…、あの時点でコンビニに駐車して、今のを言えば、良かったのではないか?誰かを当てたというのが分かっておきながら、そこまで考えなかったのか?」


 もちろん、差し出された手なんて、無視だ。


 「悪かったよ。ここに来るのに一生懸命だったから」


 ほー、そうかい。

 それって、確信犯か?

 ん?


 それに、ソイツ… 福山博人は、言うだけで頭を下げない。

 なので、まだ許せない。


 そこに割って入るように、龍三先生の言葉が聞こえてきた。

 「友明、いくら待っても無駄だよ。博人様は他人に頭は下げない。

『悪かった』という言葉だけで許してもらえないだろうか」


 ふんっ。


 「どこのお偉い様か知らないけど・・・

 他人に許しを請うなら、それなりの言動をしてもらいたいものですね」


 ふんっだ・・・。


 最大級の睨みをしてやったら、ソイツは目を見開いていた。


 それだけかよ・・・。

 こっちは、睨み顔するのは得意中の大得意なんだけどな。

 大学内では『ボス』呼ばわりされてるのに・・・。



 くそったれ!

 腹立つなー、もう。





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