最悪のスキルクリエイター
迦墨
プロローグ
1人の少年が夜の街を駆ける。
少年は大通りに入ったところで右に跳んだ。
瞬間、そこに無数の光の矢が突き刺さる。
もし、少年がその場に立ったままだったなら、その身を貫かれ絶命していたであろう。
少年は矢が放たれた方向_目の前の教会の屋根を見上げると、そこにいた自分と
「お前は本当にしつこいな」
「いやいや、放っておくとお前は何をするかわからないだろう?」
少年は面倒だと思いながらも、この場を切り抜ける最善の策を練る。
しかし、狙撃手はそんな少年に考える余裕を与えるつもりはないらしい。
「さあ、フィナーレだ」
そう言って狙撃手は矢を番えると、少年めがけて矢を放った。
少年めがけて飛んだ矢は急速に分裂し、最終的には数万を超える矢の雨となって少年に降り注ぐと、容赦なく少年の身体を貫く。
そして_
『GAME OVER』
少年の目の前に_正確には少年の目の前にあるパソコンのディスプレイにそのような文字が浮かび上がる。
すると、画面の端に通話ソフトの着信を知らせるアイコンが現れる。
少年がタップすると、そこには美少女二次元キャラのアイコンと『らむだ』という人物からの着信を知らせる表示がされていた。
『よっ、元気かい?』
少年が通話ボタンを押せば、耳につけたヘッドホンからアイコンと名前に見合わない男の声が聴こえてくる。
少年は溜息を吐くと、こう答える。
「どっかの誰かさんのせいで計画がパーになって元気はねえよ」
『そうかそうか、ざまあ!』
そう言ってケラケラと笑う、らむだ。
そんな彼の声を聞いてイライラしている少年_
彼等の出会いはゲームの中だった。
先程一葉がやっていた
【ℹ︎ndividuality Online】通称【ℹ︎O】
このゲームの特徴は無数にあるシステムと、それによって生まれる無数のプレイスタイルだろう。
ある者は、このゲーム内でオリジナルのスキルを作り上げ一騎当千の強者となった。
ある者は、このゲーム内で城を作り上げ、そして、プレイヤーを纏め上げ、国を作り上げた。
しかし、これら光の栄光の裏には当然ながら闇の栄光も存在する。
ある者は、スキルを駆使し、プレイヤーを惨殺し、国を滅ぼした。
ある者は、処理の追い付かないようなスキルを使用し、
一葉はこれらのスキルを作り上げ、世界の敵となり、運営に
そんな一葉はらむだの笑い声に苛立ちを隠そうともしない。
「死ねよ。で、何の用だよ」
『ああ、特に用事はないんだけどさ。最近妙な噂を聞いたんだ』
「妙な噂?」
おちゃらけた先程までの声とは打って変わって真剣な声にでそう言う、らむだ。
一葉も少しだけ気を引き締め、らむだの言葉を待つ。
『ああ、噂の域を出ないんだがね。師匠_【暁の旅団】のギルドマスターが行方不明になったそうだ』
「は?師匠が?」
一葉は頭の中に1人の女性プレイヤーを思い浮かべた。
【暁の旅団】、それは一葉がまだ初心者だった頃、まだ最悪のプレイヤーと呼ばれるような行為は行っていなかった頃所属していたギルドだった。
当時、そのギルドは一葉を含めて5人しか所属していないような弱小ギルドだった。
その時のメンバーは、『らむだ』、『えりんぎ』、『クローク』、一葉こと『イチヨウ』そして、ギルドマスター_『ヒイラ』。
その頃の【暁の旅団】は一葉達のような初心者を集めて基本的なことを教えてくれるという、教習所のようなことをやっていた。
その内、志を同じくしてくれた元初心者達もギルドに入り【暁の旅団】は段々ゲーム内でも徐々に有力な集団になっていった。
段々と狂っていったのはその時からだった。
当時サブマスターを務めていたクロークとえりんぎが突然ギルドを抜けたのだった。
ヒイラは2人にもう一度戻ってきてくれるように説得を試みた。
しかし_
『悪いがあんたについて行くことは出来ない。さよならだ』
『大手ギルドのサブマスになれるチャンスなんですよ。さよならヒイラさん』
そう言い残して2人はその当時の最大規模ギルド【オークスグランデ】に加入してしまったのだ。
その頃、一葉は段々と最悪のプレイヤーと呼ばれる
さらに、時期的にらむだが受験生だったこともありヒイラはたった1人、誰にも相談できずにいた。
その出来事がヒイラを変えてしまったのだろう。
その次の年、【オークスグランデ】は【暁の旅団】によって完全に潰された。
しかし、その戦闘に関わったプレイヤー達は口々に言う。
『オークスグランデは暁の旅団に敗れたのではない、【暁の魔王】ヒイラに敗れたのだ』
と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます