12, 護衛の対価

 その後、襲われるような事はなかった。

 町の手前で一度馬車を止めた。


「多分、ここまできたら大丈夫だよ。すぐに王都だ」

「スザンナ」

「ん?」

「もうどこかに行こうとしてるだろ」

「え、だ、だって……。護衛。もう必要ないだろ?」

「お礼は」

「あぁっ。うん。なんかくれんのか?」

 手を差し出してみる。

「今日、夕餉に招かれろ」

「は?」

「それから、服も見立ててやる。それから、アルブに帰る旅費。これが対価でいいか?」

「……もっと簡単なお金とかじゃないのか?」

「嫌なのか?」

「嫌じゃないよ。でも……」


「乗って」


 いきなりフェレスは差し出しっぱなしだった私の手を取って、ぐっと馬車に引きずりあげた。


「ちょっと待ってフェレス! 私、血まみれ……っ!」


 案の定、クシスがこっちを見てすこし目を丸くしていた。

「その格好で王都に入るのは目立つ」

「でも、馬車汚れちゃうかも……」

「結構細かいこと気にするんだな」

 まだ幼いけれど、綺麗で落ち着いた顔つきでフェレスはこちらを見る。


「俺達を助けてくれて汚れたんだろ。汚いものじゃない」


「…………そっか」

 微笑んだ。今度は心が温かくて。血が騒いで、ではなく。

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