探検ベーカリー

小暮悠斗

焦燥Ⅱ

「なぁ、知ってるか? 人間は知らず知らずのうちに虫を食っているんだとよ。穀物に冷凍野菜なんかにくっ付いている奴をパクッといっちまうらしいぜ」


陽気な口調だが私にとってあまり心地の良い話ではなかった。それはつまり私も――。


「そう言えばこの前、食虫について調べている変わり者の爺さんの家に行った時もあの爺さん普通に虫食っていたな、明らかに食用じゃない奴。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と言いながら手を合わせている。


どこまで本気なのかは私にはわからない。


「軽口を叩くのは止めろ」


「リーダーさんはお堅いねぇ」


それこそ軽口ではないかと思っていたら案の定、


「君たちにリーダーと呼ばれる筋合いはない」


そう言い残すと歩調を速め先に進んで行ってしまう。


「分かってからかっているでしょう? やめてくださいよ」


それでもなお軽口を叩くので無視して、先行しているリーダーの後を追う。


「止まれ!」と切羽詰まった声に振り向くと頭を伏せて戻ってこい、と指示される。


指示に従い頭を伏せたまま匍匐前進のような姿勢で移動する。


「どうしたんですか?」


私の問いに答える声はない。そのことからもただ事でないことだけは理解できた。


暫くすると先行したリーダーの叫び声が頬を撫でた風に漂って聞こえた気がした。

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