天才発明家の奇天烈ダイアリー

アーカー・サタナー

第1話 

ここ『江東高校』は非常に歴史ある高校である___らしい。俺は近所だったからという単純極まりない、それでもって自分の欲望全開にこの高校へと進学した。


「えぇと、修田院しゅうたいん はじめって言います。珍しい名前なんですぐ覚えれると思います。趣味は漫画読むこと、それとボーッとすることっす。よろしくお願いします」


教室がざわめく。そりゃそうだ、俺は自己紹介の度にこの珍しい苗字を晒すんだからな。まぁ、幸いにも俺は慣れっこだし、それにこの名前を結構気に入っている。



かつてのあだ名はシュータだとか、修ちゃん。もしくはハジメとそのまま呼ばれることもあった。だが転機は中学時代、担任は物理の専攻だった『仏瓜ふつうり先生』のある一言だった。


『修田院。お前の名前を英語読みにハジメ・シュータインとするだろ?そのあとこのハジメの『一』をドイツ語に訳すと、《アイン》だ。じゃあ、相川繋げて言ってみろ』


『アイン...シュータイン?ん?アインシュタイン?』


『そうだ!___という訳で今日からアインシュタインのあだ名をお前に与えよう、じゃあ今日も抜き打ちテストね』


という訳で俺のあだ名は『アインシュタイン』となった。そのおかげかは知らないが理系科目に強くなった。


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新学期恒例の自己紹介も終わり、色々な資料が配られた。担任の体育教師『人本ひともと 育子いくこ』教諭の大雑把な話も終わり、本日は残すところあと一つとなった。



そう、新入生およそ300人強。そのできるだけを多く我が物にしたい人々がいる。できなければ、ものによっては滅びの道を辿る___即ち、部活動紹介だ。


と、いうわけで。体育館にやってきた新入生一同。俺は4組なのでおおよそ学年の配置で言えば真ん中らへんだ。よく見える位置に来れたのは結構ツイてるかもしれない。


ところで、俺は理系であるのは言ったが。実は運動の類も嗜むのだ。理系がひょろ長いモヤシ?それは全くの偏見だ。


俺は幼少時より医者であり、武術家でもある父・十蔵じゅうぞうに師事し、我が家の一子相伝の武術『相対的領域活用修田院流物理応用柔術』

長いので略して『相修田院柔術あいしゅたいんじゅうじゅつ』を習得している。この柔術、話せば長くなるが簡単に言えば肉体を自由に動かせるようになるのだ。それのおかげで、俺は理系ながらも卓越した運動能力を手に入れたのである。




おおよそ90分ほどに渡る全ての部活動紹介は終わった。スポーツ系は王道のサッカー、野球、バスケに加え、弓道、ハンドボールなど珍しいものもあった。


あぁ、先に言っておくと俺はスポーツは嗜むが、運動自体はあまり好きではない。だから運動部は絶対に入らない。


続いて文化部。美術、演劇、科学...どれもパッとしないものばかりだったが__一つ面白いので開発部というのがあった。なんでも、日々怪しげな物ばかり作っては煙が上がったりしているらしい....


俺の趣味。最初の方に言った漫画を読む、あれは嘘だ。なぜそんなことをする必要が?と思うだろうが、俺の真の趣味、それは『開発』!!

俺の祖父は研究者兼発明家であった。その筋ではかなりの著名者で、名前のこともあり『現代のアインシュタイン』と呼ばれていたほど。

実際のところアインシュタインは物理学者だから、そのあだ名はちょっとおかしな気もするが。

ともかく、かつて父も母も仕事で忙しく、一人だった俺に『発明』という娯楽を与えたのが祖父だったのだ。


なるほど、面白い。これは入部したいものだ。....だが、一度視察はしないとな...


______________________________________


という訳で放課後。俺は件の開発部、部室兼研究室...?とかいてあるが、まぁとにかくそこへやって来た。


「失礼しま.....」


ノックの返事も無く、力強く開け放たれた扉。もちろん、俺は扉を開けようとドアノブに手をかけていたので、そのまま扉のあった空間へ倒れていく。鈍い痛みを覚悟していた俺だが、やってきたのは柔らかな感触であった。


「わわ!?だ、大胆だね?」


その女性は自らの豊満な胸部に顔をうずめている俺に赤面しながらも、言った。ん?胸部!?


「あああ!!す、すいません!!」


「い、いやいやいいんだよ~お姉さんが慌てちゃっただけだから....」


改めてその姿を確認する。女子の制服の上に、ややぶかぶかのしわくちゃな白衣。栗色のはねっけの長髪。そして頭の上のゴーグルが目を引く。


「で、で!君はアレだよね!?見慣れないから、新入生だよね!?」


「え?あ、はい...」


「で?で!!もしかして入部希望だったり___」


「しますね、一応」


「やったぁ!!!ありがとう!ありがとう!」


両手をブンブン振りながらその場でぴょんぴょん跳ねるゴーグル氏。喜んでくれて俺も嬉しいが、スカートが捲れるくらい飛んでいる。それに、タイツなのがまた破壊力を増しているというか、なんというか。


「という訳で、ようこそ!開発部へ!」


俺は部室の扉をVIP扱いのように通された。


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