第14話

「おいおい先発三橋じゃないの、ルーキーに任せられるの光栄大」


「うちもなめられたものね」


「この回でお終いにしてやろう。新人はさっさとひきずり下ろすよ」


 試合開始前の挨拶が終わって、光栄大のナインが守備についたところでさっそく慶凛大のベンチ、スタンドに野次られる。


 それにしてもスタンドに二十人くらいの部員がいるなんて選手層厚いな。


 マウンドに上がる久留美の背中をポンと叩いた真咲が親指を立てる。


「気にしない、気にしない。咲坂の後ろにはほら力強いみんなが守ってるから」


 そうは言っても気にしてしまう。慶凛大学の野次は実に品がない。なんかもう悪口だよね。


「あんた今日は私が内野にいるんだから、なじられたくなければ抑えなさい」


 りかこがファーストから激を飛ばす。今日の光栄大学のオーダーは少し変わっていた。


 光栄大学              

一番ショート 佐藤

二番セカンド 安城

三番センター 新庄

四番キャッチャー 早乙女

五番ファースト 三橋

六番レフト 織部

七番サード 鈴木

八番ピッチャー 咲坂

九番ライト 堀越


慶凛大学

一番サード 前田

二番ライト 望月

三番ファースト 志水

四番ピッチャー 鳴滝

五番ショート 野宮

六番セカンド 江口

七番レフト 長谷川

八番センター 谷藤

九番キャッチャー 大宮


 一番にソヒィーを持ってきて相手エースの三振スタートを確実に防ぐ。


 そして久留美のサポート役でファーストにりかこを置いて精神面をカバーする。


 対慶凛大戦用攻撃的オーダーだ。

 プレー。


 サイレンと共にベンチからの野次もひどくなる。


 久留美は真咲のサインに頷く。


 初球はもう決まっていた。


 投球フォームは変わらず直前までそのまま、体重を前に移動させて高く上げた足が地面についたその瞬間私は手首に意識を入れる。


 腕の振りはストレートの時と比べて若干遅く投げた。ボールは空高く舞い上がり、ほとんど回転のないままゆっくりとホームベースをかすめて真咲さんのミットに吸い込まれる。


 ストラーイク。


 高々と球審の腕が上がり一瞬慶凛大のベンチが静まる。


「秘球ハエどまりいい名前でしょ」


 騒々しいお前たちを屠るには相応しい魔球だ。なんてね。

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