餓鬼

ツヨシ

第1話

深夜、車をとばしていると、突然後方でサイレンが鳴った。


――しまった。


ここは確か制限速度が50キロだったはずだが、ちょっと前にスピードメーターを見たときは80キロを超えていた。


指示に従い路肩に車を停めた。


小さな民家の前だ。


パトカーが俺の車の後ろに停まった。


警官が降りてきて、俺の車の窓を叩く。


「ちょっと免許書を拝見」


「はい」


免許書をいつも入れている財布を取り出して見て見たが、中に免許書はなかった。


――あっ。


思いだした。


ちょっとした書類に必要だったため、免許書をコンビニでコピーした後、財布に入れずにそのまま机の上に放り出していたことを。


その旨を伝えると、警官は露骨にいやな顔をした。


「スピード違反の上に、免許不携帯ですか。ちょっと照合しますね。免許不携帯ではなくて、無免許の可能性もありますので」


俺は警官の言われるままにパトカーに乗り込み、そのまま助手席に座った。


「名前は。住所は。何か身分を証明するものはありますか」


大型量販店のカードやら診察券などをわたした。


「みんな顔写真がないですねえ」


警官はぶつぶつ言いながら、手に持ったタブレットを操作し始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る