学園祭(再び)


学園祭。


リョウタロウとソウヤは出店の焼きそばを売る担当だった。


「はい、らっしゃい!はい、お待ち!はい、お釣り!はい、ありがとーう!」


リョウタロウが物凄い勢いで客を捌いていく。


それを目の当たりにしたソウヤは感心してるのか若干呆れてるのか分からない表情でリョウタロウを見つめる。


「お前にそんな才能があったとはな…つか、その才能を他に活かせや」


「はい、ありがとーう!また来てねー!ん?何か言ったか?」


「…何でもない」


「おーい、ソウヤと節操なし!交代の時間だぞー!」


ある程度捌ききった時に交代の声がかかった。


「んじゃ他の出店でも見て回りますか!」


…リョウタロウ、節操なしって言われてるのに自分の事だって分かるんですね。


リョウタロウがエプロンを脱ぎ、ソウヤと共に出店を回ろうとした瞬間、どこかで見た事のある人物達の姿を見つけた。


「ん?あの子達は!」


そして大声で叫ぶ。


「おーい!かわい子ちゃん達!」


「ゲッ!」


声をかけられた子の内の2人…眞白と花音が嫌そうな声を出す。


「ソウヤ先輩だ」


「おぅ、来てくれたのか」


時雨がソウヤに向かって挨拶をすると、ソウヤはニコリと応えた。


「俺もいるよぉー!」


「おかしいな、声だけが聞こえる」


「私は勿論覚えてますよ!リョウタロウ先輩!」


リョウタロウの情けない声に知らないフリをする終夜としゃしゃり出る川田。


「君、会ったことあったっけ?」


「大学体験で会ったじゃないですか!川田ですよ!」


「ごめんね、俺好みじゃない子と興味のない子は眼中に無いんだ」


「ガーン…!」


川田がその場に崩れ落ちる。


「悪ぃ、川田君。リョウタロウの事は気にしなくて良いから」


「いや!自分、リョウタロウ先輩の事リスペクトしてるんで!」


「顔も中身も残念な子にリスペクトされても嬉しくないんだよな」


「えぇー!」


「お前が言うな、お前が!」


諦めない川田に無自覚にトドメを刺したリョウタロウの頭をパッシーンっ!っと叩くソウヤ。


とても良い音がした。


が、リョウタロウは気にしていない。


小柄で可愛らしい女の子を見つけ。


「君、ちっちゃくて可愛いね!俺と付き合わない?」


「え?え?」


「アリスちゃん、無視していいから」


急に声をかけられ戸惑うアリスに眞白が冷静に告げる。


そこでソウヤがこう切り出した。


「俺ら、店番終わって今から他の出店見て回るんだけど…良かったら一緒に行くか?」


「ソウヤナイス!かわい子ちゃん達俺らと一緒に見て回ろう!」


「ソウヤ先輩がそう言うなら是非」


と、花音。


「俺らもソウヤ先輩と回れるなら。な、終夜?」


「そうだな!」


と、時雨と終夜。


「わーい出店ー!楽しみー!」


と、アリス。


「一人余分だけどな」


「眞白君!それは私の事かい!?」


と、眞白と川田。


「俺の立場ってなんなのー!」


「モブ?」


心の叫びを訴えるリョウタロウに川田以外の皆が口を揃えて答える。


「まぁ、そんな事は置いといて行こうぜ 」


ソウヤの言葉にリョウタロウを除いて全員が頷いた。



こうして8人は出店を見て回るのであった。


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