第4話 虹色妖精

「えーっと、このコインはよく売れるのよね。剣のおもちゃは危ないから止めにして、あ、可愛い靴!小さいのにしっかりした革のブーツね。羽の付いたデザインも良いわ」




 壁にあいた窪みの中から、次々と商品を取り出しては選別していく美香。


 どれもサイズは小さいがしっかりした作りの骨董品だ。


「昔の着せ替え人形の御道具かな?あ、この木の棒も、すごく細工が細かくて、きれいな石も付いてる!よし、今日の目玉はこれね」




 台車に乗せてきた段ボール箱にポンポンと商品を入れて、いっぱいになったのでさあ帰ろうかと思った丁度その時、段ボール箱の影に動く何かを見つけた。




「あ、こら!」慌てて殺虫剤をスプレーする美香。段ボールの中から木の棒を盗み出そうとしていたそいつは、慌てて口をふさいで防御したが、木の棒を取り落として、よろよろと奥へ消えて行った。




「うーん、なんだか可哀そうになるわね。木の棒一本くらいあげても良かったかしら」


 しばらく考えた後、美香は段ボールからその細工の細かい美しい木の棒を拾いあげた。洞窟の奥へと持って行って、誰もいないそこへ、そっと置いて台車に戻った。


 今日の悪魔は、美しい虹色の羽を持って、まるで妖精の様だった。最近は美香に対して攻撃してくるものも少なくなったので、そんな悪魔に対しては、以前のように毛嫌いすることもなく、放っておけばいいかと思うようになったのだ。




 諦めた棒の代わりに、窪みから小さなコーヒーカップのようなものを拾って段ボールに入れると、美香は第4倉庫を出て店へと戻って行った。


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