第三十四回 「Pretender」から読み解く、異性愛という軛からの解放

 Official髭男dism の大ヒット曲「Pretender」はご存じだろうか?

 知らない方は、まず一度聴いてみて欲しい。そして、色々と想像して欲しい。この楽曲の奥にある景色を。


 さて、僕がこの「Pretender」を聴いた時、すぐにこれは同性愛だな、と感じた。その理由は、やはり歌詞だ。

 単純に好きとか愛してるとか切ないとか会いたいとかを言っていない。勿論、この楽曲のパワーワードは「運命の~」の部分なのだが、そこばかりを注目していたら、見落としてしまう部分がある。この楽曲が、恋愛末期の切ない男女の片思いとなってしまう。

 いや、僕は作詞をした藤原氏(奥州でも北家でもない)ではないので間違っているのは承知であるが、僕はこの楽曲で柱だと思ったのは、「不条理への嘆き」だ。

(Pretenderが同性愛の曲だと仮定して)この楽曲の世界は、同性愛を堂々と伝えられない世界。だから違う世界線で、設定で、関係で、価値観の社会で出会いたかったと嘆いている。その上で、異性愛のように、気軽に無責任に「好きだ」と言いたいと願っている。

 むしろ異性愛であるなら、世界線・設定・関係・価値観という世の中の全てを嘆く必要はあるのだろうか? 不倫であれば嘆くかもしれない。しかし、それなら「もっと早くキミと出会っていたら」で済みはしないだろうか。設定と関係はわかるが、世界線と価値観という、不倫行為を是とする社会を望むだろうか?

 否、であろう。不倫する二人が望むのは、おそらく未婚のままで出会う事。不倫を容認する社会は望まない。望むかもしれないが、複雑な解釈を楽曲の中でする事はないだろう。

 最後に「Pretender」の意味。この言葉には、「ふりをする人」という意味がある。なんとも意味深なタイトルだ。

 このタイトルは、異性愛としても同性愛としても色んな意味を持ってくる。

・恋愛末期だと気付いているけど気付かないふりをする。

・好きだけど友達のふりをする。

・既婚だけど独身のふりをする。

・同性愛だけど、異性愛のふりをする。

 他にも同性愛と感じるポイントはあるが、大事なポイントとしては上記の部分だ。


 僕はその事を、自信満々に会社の女の子に伝えたら、

「無い! 無い! 絶対ないからw PV見てよ!」

 と、言われてしまった。

 その時の僕はPVを未視聴だったので帰って何度も見ましたが、余計に自分の推察を補強する結果になった。

 勿論、PVには可愛らしい女の子が登場する。しかし、その傍には主人公の友人らしい青年がチラチラ登場するのである。

 僕には、女の子を見ながらも本当は、この青年を見つめているように思えてしまうのだ。

 きっと、この二人は親友なのだろう。お互い彼女と呼べる存在がいるのかもしれない。しかし、主人公は密かに親友に惹かれていた。でも「好きだ」と伝えたら、全てを失ってしまう。傍にいられるという親友関係すら失ってしまう。だから気持ちを打ち明けられない。でも、親友の気持ちも気になる。だから内心で問いかけるのだ。


「キミにとって、僕はどんな存在?」


 いやーキュンキュンしますね! 僕は恋愛体質の恋愛大好きおじさんなので、異性愛だろうが同性愛だろうが、切ない恋愛には胸がシクシク来ちゃうの。



 以上、思うところを述べたが、「Pretender」が異性愛かもしれないというのは否定しない。異性愛かもしれないが、同性愛であるかもしれない。

 それは聴く者が決めればいいのだが、その選択肢があるだけでも素晴らしい事ではないだろうか。

 性愛の多様性が叫ばれる昨今、「Pretender」が「恋愛ソング=異性愛」という軛から解放してくれる素晴らしい楽曲であると、僕は思っている。

 ぜひ皆様も、歌詞の意味を考察しながら聴いてみてよね。


 あ~、またボーイズラブな小説でも書こうかしら。

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